【質問者】
福井寿啓 熊本大学大学院生命科学研究部 心臓血管外科学教授
大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation:AR)に対する弁形成術は,いまだ市民権を得ているとは言い難く,独自の2014年の全国アンケート調査では単独の弁形成術はわずかに8%,弁温存基部置換術でも31%しか施行されていませんでした。この背景には,僧帽弁は組織が厚くてvolumeが十分あり,弁形成後の評価(逆流テスト)が容易で,人工腱索再建やリングなどのoptionが多々あるのに対し,大動脈弁は薄くてvolumeが少なく,弁形成後の評価は外科医の経験や主観に頼ってきた側面が強く,人工腱索やリングもなかったという経緯があります。
そこで2006年に弁尖の高さ(effective height)の客観的な評価が提唱され,2009年に僧帽弁のようにARの成因分類が発表され,並行して様々なannuloplastyが積極的に施行されるようになり,大動脈弁形成術の成績が向上し,近年急速に広まっているのが現状です。
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