転移性前立腺癌に対する標準治療はホルモン療法である。治療成績の向上を目的に初回ホルモン療法に化学療法併用の有用性を検討した大規模ランダム化試験の結果,化学療法併用による予後の改善が報告された。STAMPEDE試験1)では,ドセタキセル化学療法併用(75mg/m2,3週ごと,6コース)が標準療法(ホルモン療法と一部放射線療法)よりも,CHAARTED試験2)では,特に高腫瘍量患者において,ホルモン療法とドセタキセル化学療法併用(75mg/m2,3週ごと,6コース)が,ホルモン療法単独よりも全生存期間の延長を示した。一方,低~中等度リスク患者が77%を占めたGETUG-AFU15試験3)では,ドセタキセル化学療法併用(75mg/m2,3週ごと,9コース)による全生存期間の延長は認められなかった。
わが国においては,ドセタキセルの保険適用上の注意として,去勢術後の進行または再発が確認された患者が対象となることに留意すべきと思われるが,海外における結果から,未治療の転移性前立腺癌患者に対してホルモン療法とドセタキセル化学療法の併用が有用である可能性がある。今後は併用療法の恩恵を受ける患者像をさらに明らかにする必要がある。
【文献】
1)James ND, et al:Lancet. 2016;387(10024): 1163-77.
2)Sweeney CJ, et al:N Engl J Med. 2015;373(8): 737-46.
3)Gravis G, et al:Lancet Oncol. 2013;14(2):149-58.
【解説】
橋本浩平*1,舛森直哉*2 *1札幌医科大学泌尿器科 *2同教授