No.4854 (2017年05月06日発行) P.54
廣井一正 (岡山大学麻酔・蘇生学)
森松博史 (岡山大学麻酔・蘇生学教授)
登録日: 2017-05-04
アルブミン製剤は1940年代より臨床使用が始まり,重症患者に対する効果から約70年間広く世界中で使用されてきた。近年,特定の患者群に対するエビデンスから適応が再考されつつある1)。
わが国では99年,厚生労働省より「血液製剤の使用指針」が策定され改定されてきた。後の臨床研究の知見から,2015年に日本輸血・細胞治療学会「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」が作成された。ガイドラインでの推奨度は以下の通りである。アルブミン製剤には晶質液に比した高医療費や生物製剤の問題も存在し,慎重に適応を判断する必要がある。
推奨:肝硬変(1型肝腎症候群,特発性細菌性腹膜炎,大量の腹水廃液,難治性腹水の管理),凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換療法,他の血漿増量剤が適応とならない病態。
通常は使用しない:難治性の浮腫,肺水腫を伴うネフローゼ症候群,低蛋白血症に起因する肺水腫あるいは著明な浮腫,出血性ショック,重症熱傷,重症敗血症,循環動態が不安定な体外循環,血漿循環量の著明な減少,人工心肺を使用した心臓手術,くも膜下出血後の血管攣縮。
不適切な使用:周術期の循環動態の安定した低アルブミン血症,蛋白資源としての栄養補給,末期患者。
禁忌:頭部外傷2)。
【文献】
1) Vincent JL, et al:Crit Care. 2014;18(4):231.
2) 日本輸血・細胞治療学会:科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン. 2015.
【解説】
廣井一正*1,森松博史*2 *1岡山大学麻酔・蘇生学 *2同教授