ホルムアルデヒドやトルエンに代表される初期のシックハウス問題は,ほぼ解決した
代替物質,微生物揮発性有機化合物(MVOC),準揮発性有機化合物(SVOC),PM2.5などの新たな物質による汚染が注目されている。加えて,天然素材からの発生や二次的な生成など,汚染物質の生成要因は複雑化している
総揮発性有機化合物(TVOC)濃度や臭気とシックハウス症状発現の関係は,高感受性群で明確に現れる
揮発性有機化合物(VOC)濃度の総量規制が望まれる
「環境改善型予防医学」による未来世代のための街づくりが重要である
室内空気中には多くの化学物質が存在し,シックハウス症候群の主な原因はそれらの化学物質〔揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOC)〕と考えられている。そのため厚生労働省は,2002年までに体内への影響が懸念される13物質について室内濃度の指針値を設定し,03年には国土交通省が建築基準法を改正した。これらにより,住宅や労働環境における室内空気中のホルムアルデヒドやトルエンなど指針値のある化学物質の濃度は一部を除いて指針値以下のレベルとなり,シックハウス問題は終息したかに見えた。しかし,室内空気汚染の実態が大きく変化しているため,シックハウス症候群の訴えは後を絶たず,問題はいまだ解決されていない。
当センターでは,環境を改善して疾病を予防する「環境改善型予防医学」の実践の場として,2007年に千葉大学柏の葉キャンパス内に化学物質をできるだけ削減したモデルタウン「ケミレスタウン1397904493 」を建設し,シックハウス症候群を予防するための実践研究「ケミレスタウン・プロジェクト」を開始した。「ケミレスタウン」では,室内空気中のVOC濃度を継続的に測定するとともに,健康なボランティアに依頼をして五感による体感評価試験を行ってきた。
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