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(2)『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き』の使い方 [特集:新規薬剤が引き起こす薬剤性肺障害]

No.4743 (2015年03月21日発行) P.25

花岡正幸 (信州大学医学部内科学第一教室教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-09

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  • 薬剤性肺障害とは,薬剤と関連する呼吸器系の障害のことで,すべての薬剤が肺障害を起こす可能性があることを念頭に置く

    自覚症状としては呼吸困難,乾性咳嗽,発熱が多く,診断には既存の肺病変の悪化や感染症など,ほかの原因疾患を否定することが重要である

    治療の基本は,疑わしい薬剤(被疑薬)の中止,副腎皮質ステロイドの投与,呼吸不全への対策,全身管理である

    1. 「手引き」発刊の経緯

    日本呼吸器学会は,2002年7月に上市されたゲフィチニブ(イレッサ1397904493)による急性肺障害・間質性肺炎の多発を受け,2006年4月『薬剤性肺障害の評価,治療についてのガイドライン』を発刊した。その後も,分子標的治療薬や生物学的製剤など新規薬剤の開発,上市が相次ぎ,薬剤性肺障害の報告件数が増加するとともに,mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬(アフィニトール1397904493,トーリセル1397904493)にみられるような新たな病態も出現してきた。
    このような状況から,日本呼吸器学会は『薬剤性肺障害の評価,治療についてのガイドライン』の改訂を試みたが,薬剤性肺障害は個々の症例が対象で発症の予想が難しく,無作為割り付け試験が存在しないため,ガイドラインに必要なエビデンスレベルや推奨レベルの記載が困難であることがわかった。そこで,ガイドラインから『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き』(以下,「手引き」と表記)にリニューアルされ,2012年5月にメディカルレビュー社から発刊された。
    薬剤性肺障害は,薬剤を使用するすべての領域の医師が遭遇する疾患であるため,「手引き」は日常臨床での参考になるよう平易に記述されている。本稿では,「手引き」の内容に即して,日常臨床に必要な薬剤性肺障害の基本的知識を解説する。

    2. 薬剤性肺障害の基礎知識(第Ⅰ章)

    薬剤性肺障害は,「薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害のなかで,薬剤と関連があるもの」と定義される。薬剤は医師が処方したものだけでなく,一般薬,生薬,健康食品・サプリメント,さらに非合法薬などすべてを含む。薬剤性肺障害の臨床病型は,臨床所見,画像所見および病理組織所見によって特徴づけられ,その分類は薬剤以外の原因による呼吸器疾患との類似性に基づいて行われる。個々の薬剤に特異的な臨床病型はなく,1種類の薬剤が多種の臨床病型を示す場合も多い。薬剤投与から肺障害発生までの時間は数分から数年と多様であるが,一般的には投与後2~3週間から2~3カ月の間で発症する。
    薬剤性肺障害には,その発症に関与するリスク因子が知られており(表1),特に先行する肺病変の存在に注意を払う必要がある。疫学的には,2000年以降,薬剤性肺障害の報告件数が増加している。これは,ゲフィチニブによる薬剤性肺障害が“薬害”として国民的関心を集めたことをきっかけとし,その後の新規薬剤の開発や高分解能CT(high resolution CT:HRCT)など診断技術の進歩が関係している。画像的にびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)パターンを示す場合の予後は不良であるが,日本人にはこのパターンを示す薬剤性肺障害の発症頻度が高い。日本人特有の体質的素因の存在が指摘されており,遺伝子解析を含めた宿主因子の解明が試みられている。

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