【質問者】
國原 孝 心臓血管研究所付属病院心臓血管外科部長
選択的脳灌流法の至適灌流条件は,1980年代にわが国で確立されました。現在でも「低体温では低流量・低圧灌流が安全」というコンセプトは健在です。中島伸之先生は直腸温25℃で500mL/分,浅側頭動脈圧40~60mmHgが至適であるとし,常温ないし軽度低体温で840~1400mL/分,60~140mmHgの高流量高灌流圧では高率に脳障害が発生し,中等度低体温で灌流圧<100mm Hgとすることで若干改善した,と報告しています。数井暉久先生は直腸温22℃,10mL/kg/分,右橈骨動脈圧50~70mmHgが至適としていますが,後の実験では,25℃では正常流量の50%以上,灌流圧40~70mmHgで誘発電位が回復したと報告しています。
正常脳血流は750mL/分程度であり,常温では50~170mmHgの範囲でautoregulationが働きます。20℃になると,この範囲は30~100mmHgと低下します。またautoregulationは12℃未満やpH-stat管理では消失します。autoregulationが存在する脳,心,腎などの臓器は,高圧・過灌流に弱いことが知られていますから,「低体温領域では低圧・低流量が安全」というコンセプトは正しいです。また,北米の体外循環のevidence-based reviewでもα-stat管理が推奨されています。
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