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ウイルス性結膜炎罹患者の出勤停止期間は?【通常は発症後10日だが,感染性の有無が基準】

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  • (2)出勤停止解除時の注意点
    ただ,出勤停止を解除する判断の上で注意すべき点がいくつかあります。まず,重症例では時に結膜偽膜,結膜下出血,瞼球癒着などがみられ,炎症所見の経過が通常よりも長くなります。近年増加している新型の54型による症例では,角膜潰瘍などの角膜合併症が遷延する場合もあり,発症後2週間程度を経過しても,治癒とは言いがたいような場合があります。臨床所見は病原体側の型によって異なり,宿主側の免疫状態や既感染による抗体保有状態によっても異なります。しかし,臨床所見が残っている場合でも,長くて発症後14日を明らかに過ぎている場合には,ウイルスの存在がなくても角結膜炎症が遷延していると考えるべきなので,出勤をいたずらに長く停止する必要はありません。

    もう1つの問題は,対側眼です。鋭敏なPCR法によって,院内感染例における無症候例(初発眼の対側眼)からAdV DNAが検出されたという報告がありますが2),その後,典型的な結膜炎所見を生じていないことや術後炎症との鑑別の困難さなどから,潜伏期にあたる対側眼がAdV感染のリスクとなるかどうかは,まだ見解が定まっていません。無症候性にウイルス粒子が放出される状態をsheddingと言いますが, AdV結膜炎を10年前に発症した患者30例中17例の涙液からAdV DNAがPCR法によって示された3)という報告があり,単純ヘルペスウイルスではよくみられる既感染者の涙液中へのウイルスのsheddingがAdVにもみられることは確かです。

    涙液中ウイルスが感染性を有するかどうかははっきりせず,今後の課題ですが,職場,家庭などでの感染伝播を防ぐ意味では,初発眼だけでなく,対側眼も一定の感染源となりうる可能性を考慮して,不必要に眼に触ることを避け,手洗いをこまめに励行することが重要であることは,このような理由からも明らかで,患者に対してはよく注意するよう指示することが望まれます。

    【文献】

    1) Ozturk HE, et al:Eye Contact Lens. 2013;39(4): 264-8.

    2) Kaneko H, et al:Cornea. 2008;27(5):527-30.

    3) Kaye SB, et al:J Med Virol. 2005;77(2):227-31.

    【回答者】

    内尾英一 福岡大学医学部眼科主任教授

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