2015年9月,全国で小児の喘息発作入院が急増した。ガイドラインの普及で喘息のコントロールは向上し,喘息の発作入院も減少傾向であったのに,連続の発作入院は明らかに異常であった。このとき,重症喘息発作の4例(うち2例がICU)よりエンテロウイルスD68(EV-D68)が検出されたとの報告,EV-D68が検出された急性弛緩性麻痺の報告が続き,2つの疾患にEV-D68流行の関与が疑われた。後者については厚生労働省による積極的な疫学調査が行われたが,喘息については調査の対象とならなかったため,日本小児アレルギー学会が独自で全国調査を157施設,8万7189例で行い,後方視的検討で,EV-D68の流行と15年9月の喘息発作入院急増の関連を統計学的に証明した1)。
EV-D68はピコルナウイルス科エンテロウイルス属のRNAウイルスで,夏から秋に感冒,下気道炎,喘鳴などを起こす。これまであまり知られていなかったが,14年に米国,デンマークなどで大流行し,重症の呼吸器感染を起こしたことにより注目されるようになった。喘息がウイルス感染(特にライノウイルス)で悪化することはよく知られている。EV-D68は数年ごとに流行するが,いったん大流行すると「喘息アウトブレイク」も起こすことがわかった。感染症と連動した喘息発作サーベイランスが必要であろう。
【文献】
1) Korematsu S, et al:Allergol Int. 2017 Apr 25. [Epub ahead of print]
【解説】
藤澤隆夫 国立病院機構三重病院アレルギーセンター 院長