加齢に伴い腎機能が低下していることを念頭に置き,薬物投与設計を行う
各腎機能推算式の特性を知る(パラメータを理解する)
腎機能は,加齢に伴い低下することが知られている。たとえば,糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)50mL/分/1.73m2未満の場合,GFR 60~70mL/分/1.73m2の場合に比して2倍以上のスピードで腎機能が低下し,末期腎不全(end stage kidney disease:ESKD)に陥る危険性が高まると言われている(図1)1)。
70歳以上では,特にGFR 40mL/分/1.73m2未満から腎機能低下のリスクが高まることが知られている。
腎臓から排泄される薬物は,腎機能が低下すると体内に蓄積されるため薬物の血中濃度は上昇し,副作用の発現頻度が高くなる。このことから,最適な薬物投与設計を行うためには,腎機能を正しく評価することが重要となる。
血清クレアチニン(Scr)の基準値は,男性0.6~1.1mg/dL,女性0.4~0.8mg/dL(施設基準により異なる)で男女差がある。ただし,クレアチニン(Cr)の産生量は筋肉量に比例するため,筋肉量が極端に多い,または少ない場合,腎機能の指標として使用することは推奨されていない。長期の臥床により筋肉量が減少している高齢者の場合,Scr値は低値を示すため腎機能が過大評価される可能性がある。バンコマイシンの投与設計を行う際,Scr値が0.6mg/dL未満の場合は,Scr値に0.6mg/dLを代入して評価するとよいとの報告もある2)。
また,日本腎臓学会編の「CKD診療ガイド2012」では,腎機能区分をGFRによって定めている(表1)1)。腎機能は加齢とともに低下するため,高齢者ではScr値が基準値内であっても腎機能が低下している場合が多い(表2)。
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