1923年,Goninの発表以来,改良が重ねられた裂孔原性網膜剝離の手術には,大別すると2つの方法がある。
強膜内陥術(SB)が長い間主流であったが,71年にMachemerの開発した閉鎖式経毛様体扁平部硝子体手術(PPV)がその後発展した。
SBは,眼球の外壁である強膜からアプローチし,冷凍凝固やジアテルミー焼灼により裂孔部分を処置した上で,同部をシリコン材料で内陥させることにより網膜を復位させる。PPVは,毛様体扁平部に創口を作製し,網膜を牽引している硝子体を切除し,空気などでタンポナーデすることにより治癒せしめる。
SBは,術後体位制限が多くの場合不要であり,早期社会復帰が可能,術中に網膜裂孔や白内障を生じるリスクが少ないことなどの利点がある一方,健常強膜に侵襲を加えることになり,また,術後乱視を惹起するという欠点がある。PPVは,術中に網膜復位を確認できる利点はあるが,医原性裂孔を発症するリスクがあり,術後白内障の進行を認めることが多い(そのため,中高年層に対しては白内障との同時手術をすることで対応する)。また,術後数日の体位制限が必要となる。
近年,PPVは小切開化が進み,観察系や照明系の改良,術中可視化薬の開発などと相まって,より低侵襲で安全性の高い手術となった。手術手技の習得がSBと比較して容易であり,この方法を選択する割合が高くなっている。この場合,後部硝子体剝離を確実に作製することが前提となるが,特に若年層ではこの手術操作が困難な場合が多い。術前診察を慎重に行い術式選択することが重要になる。
【解説】
高尾宗之 東京大学眼科特任講師