閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断は専門医でも困難な場合があり,不必要な治療が行われて必要な治療が行われていないのが現状である
診断は,①問診,②理学的所見,③検査所見,④画像検査,⑤そのほかの検査を総合し,鑑別疾患を念頭に置きながら行う
症候は,Fontaine分類とRutherford分類で重症度分類がなされている
間欠性跛行の鑑別疾患としては,脊柱管狭窄症,静脈性跛行,神経性跛行などが挙げられる
潰瘍・壊疽の鑑別疾患としては,糖尿病性壊疽・潰瘍,trash foot,急性動脈閉塞による下腿・足趾壊疽,静脈性潰瘍などが挙げられる
まず問診であるが,閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)を疑って診るためには,リスク因子の存在を把握しておく必要がある。動脈硬化のリスク因子としては,肥満(ウエストの周囲径:男性≧85cm,女性≧90cm),高血圧症(収縮期血圧≧130 mmHg,拡張期血圧≧85mmHg),脂質異常症(高トリグリセリド血症≧150mg/dLかつまたは低HDLコレステロール血症<40mg/dL),糖尿病(空腹時血糖値≧110mg/dL)で,いわゆるメタボリックシンドローム関連因子がある1)。
メタボリックシンドロームは動脈硬化症の末路であり,リスク因子が3~4個存在する場合の冠動脈疾患発症のリスクは,リスク因子がない場合に比べ31.34倍にもなることが報告されている2)。そのほかASOのリスク因子としては,高齢,男性,喫煙,高尿酸血症,透析が挙げられる3)。
症候としては,①無症候,②間欠性跛行,③安静時痛,④潰瘍・壊疽で,重症度分類(Fontaine分類,Rutherford分類)(表1)3)がされており,ASOの症状か否かを見きわめることが重要である。
無症候は症状がないため,足関節上腕動脈血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)検査や画像検査で指摘される。病変に対しては,閉塞しかかっているバイパスグラフトの治療,ステントグラフトなどの心血管デバイスの挿入路の確保以外は基本介入しなくてよい4)。無症候性でも心血管イベントリスクは症候性と変わりがないため5),心血管イベント発生の予防が必要なASOと診断する。
間欠性跛行をきたす鑑別疾患としては,腰部脊柱管狭窄症,膝窩動脈捕捉症候群,静脈性跛行,神経性跛行などが挙げられる(表2)3)。
腰部脊柱管狭窄症と合併する場合も6.7~26%みられ,診断が困難をきわめることがある6)7)。腰部脊柱管狭窄症は両側性であることが多く,問診時にも殿部から大腿にかけて痛みを訴えることが多い。腰部脊柱管狭窄症のみの場合は,脈拍触知が良好であればASOとの鑑別が可能である。ASOは片側性であることが多く,問診時に足の痛みを訴えることは少ない。歩行後の,主に下腿腓腹部の痛みを訴え,この痛みは坂道を歩行することで増悪する。
残り3,936文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する