No.4869 (2017年08月19日発行) P.55
澤村成史 (帝京大学麻酔科主任教授)
登録日: 2017-08-18
監視下麻酔管理(monitored anesthesia care:MAC)とは,手術や内視鏡・カテーテル手技などの処置に際して,局所麻酔と鎮痛・鎮静薬等を用い,呼吸や循環機能をサポートして患者の安全と快適を確保する鎮静管理法である。新しい鎮痛・鎮静薬や神経ブロック法,さらに麻酔科医の持つ全身管理の技量を駆使し,高い患者満足度と早期回復を目的に行われる。
非麻酔科医により日常的に行われている軽~中等度の鎮静と違い,MACでは患者の状態や処置の必要度に応じて,鎮静の深さを覚醒から全身麻酔レベルまでフレキシブルに調整する。このためMACでは,安全に気道を確保し,全身麻酔を遂行する能力を有する医師(通常は訓練された麻酔科医)が専従し,全身麻酔と同等のモニターを用いて絶えず患者を監視することが求められ,術前・術後管理も同等に行われる1)。
近年では,経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)や覚醒下開頭手術などもMACで管理される。前者では高齢者が多いため全身麻酔と比べて迅速な術後回復が得られ,後者では術中に患者と対話して言語・運動機能を確認できるメリットがある。
MACは,米国では通常の鎮静と明確に区別された医療行為であるが,わが国ではいまだ相応しい診療報酬が算定されず,(特に手術室外で)MACを担当する麻酔科医も不足している。
【文献】
1) American Society of Anesthesiologists:Position on Monitored Anesthesia Care.
[http://www.asahq.org/~/media/Sites/ASAHQ/Files/Public/Resources/standards-guidelines/position-on-monitored-anesthesia-care.pdf]
【解説】
澤村成史 帝京大学麻酔科主任教授