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常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の患者の腎予後【腎動脈塞栓術によりQOL・生命予後が改善。予後の規定は心血管系障害による】

No.4869 (2017年08月19日発行) P.59

山縣邦弘 (筑波大学医学医療系腎臓内科学教授)

乳原善文 (虎の門病院分院腎センター内科部長)

登録日: 2017-08-16

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  • 常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)の治療法について,前向き研究の結果の公表があり,わが国でもトルバプタン(サムスカ)が保険適用となるなど治療法が大きく変わってきていると聞いています。これらの新しい治療法は,ADPKD患者の予後をどの程度変化させたのでしょうか。
    これまでも多くのADPKD患者の診療に当たられてきた虎の門病院・乳原善文先生にADPKDの治療法の進歩とその効果・影響について解説して頂ければと思います。

    【質問者】

    山縣邦弘 筑波大学医学医療系腎臓内科学教授


    【回答】

    ADPKD症例では,腎機能低下の進展とは反比例して腎サイズが逆に大きくなり,これは他の腎疾患にはみられない本症特有の特徴です。腎症進展を予防する内科的治療としては,高血圧合併者がその最大の危険因子とされていることから厳重な降圧薬治療が必要になります。

    1988年の日本透析医学会の調査において,本症の透析導入年齢が平均55.8歳でしたが,2013年の調査では62.3歳に伸びました。腎不全管理で高血圧治療を内科医が積極的に行ったことがその要因と考えられます。トルバプタンの効果については,現在進行形でもう少し時間が必要ですが,10年後,20年後に評価されると期待しています。

    さらに透析導入後も腎腫大が続き様々な合併症が生じたとき,従来は腎摘除術を含めた外科的治療法が選択されてきましたが,嚢胞群を支える栄養血管を塞栓することで,嚢胞ひいては腎臓を縮小させる腎動脈塞栓術が可能になりました。これによりQOLの著明な改善のみならず,本症の生命予後の改善まで報告されました。

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