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超高齢女性の高γ-グロブリン血症の原因は?【診断基準と照らし合わせ,IgG4関連疾患を疑う】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.61

宇都宮保典 (保谷病院副院長)

登録日: 2017-08-29

最終更新日: 2017-08-29

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  • 90歳,女性。既往に,①2012年骨粗鬆症による胸椎圧迫骨折,②2015年原因不明の右脚関節炎で入院(CRP 4.0mg/dL,CA-RFと抗CCP抗体は正常),プレドニゾロン内服で軽快。

    2016年6月に血糖が166mg/dLと高値(HbA1c 5.3%)だったため尿一般沈渣を調べたところ,尿蛋白(4+)・赤血球沈渣を多数認めました。2015年6月の尿検査では尿糖(2+),尿蛋白(-),赤血球沈渣5~9,赤血球円柱1~4個。超音波,CTで両腎結石,総胆管結石を多数認めました。腎生検は患者が拒否し未施行。2016年6月,IgA 562mg/dL,IgG 2564mg/dL,IgM 75mg/dL,IgG4 441mg/dL,尿蛋白定量 1163mg/dL,尿クレアチニン定量 52.9mg/dL,尿中β2-マイクログロブリン 5640μg/L。2016年12月,骨髄検査では,染色体異常(-),多発性骨髄腫などの悪性細胞は認められませんでした。

    担当医の意見では尿蛋白陽性,低アルブミン血症の原因は高γ-グロブリン血症が背景にあり,血液悪性疾患やリウマチ性疾患などは認められず,総胆管結石多発による慢性発症の二次的変化によると考えられ,高度の蛋白尿は溢流によるもので,腎疾患からくるネフローゼ症候群ではない由。

    2017年1月,貧血の進行,両下肢の浮腫,胸腹水著明により入院中。Hb 7.7g/dL,血小板23.9万/μL,TP 6.5g/dL,アルブミン1.0g/dL,BUN 14.6mg/dL,Cr 0.42mg/dL。アルブミン,利尿薬投与で経過観察中です。

    (1)現在まで一度も腹痛や発熱などもなく,また肝機能障害の既往がないのに総胆管結石により高γ-グロブリン血症が生じるでしょうか。
    (2)高γ-グロブリン血症は溢流性の高度な蛋白尿と考えられますが,そのメカニズムについて。
    (3)本症例の診断・治療について補うべきものはありますか。

    (秋田県 F)


    【回答】

    (1)高γ-グロブリン血症の原因

    本症例では高IgG血症に加え血清IgG4値が441mg/dLと上昇しており,IgG4関連疾患が疑われます。IgG4関連疾患とは,血清IgG4高値と罹患臓器におけるリンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤,線維化を特徴とする原因不明の疾患です。血液検査では血清γ-グロブリンの上昇,血清IgG高値,高IgG4血症(IgG4>135mg/dL)を認めます。わが国では厚生労働省研究班よりIgG4関連疾患の診断基準が提唱されています1)

    したがって,本症例における高γ-グロブリン血症の原因としてはIgG4関連疾患が疑われます。

    (2)高度な蛋白尿の原因

    本症例ではネフローゼレベル(尿蛋白/尿クレアチニン比≧3.5g/gCr)の高度蛋白尿と低アルブミン血症(血清アルブミン値≦3.0g/dL)を認め,ネフローゼ症候群を呈しています2)
    IgG4関連疾患の腎病変はIgG4関連腎臓病と命名されており,その病理所見は間質性腎炎が主体ですが,約4割の症例で膜性腎症など糸球体病変を伴うことが報告されています3)。したがって,本例の高度蛋白尿の原因は,膜性腎症などの糸球体病変が疑われます。

    さらに本症例では,尿中β2-マイクログロブリンの高値を認めており,尿細管間質性腎炎も腎結石に加え,血尿の原因として鑑別に挙げられます。

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