(島根県 T)
急性虫垂炎は日常診療で遭遇する急性腹症の中で最も頻度が高く,従来は緊急開腹手術が標準治療でした。近年,画像診断技術の進歩,抗菌薬の開発や腹腔鏡手術の普及により,治療法が多様化しています。特に,非穿孔性虫垂炎に対しては保存的治療が選択される機会が増加し,interval appendectomy(IA)など緊急手術以外での手術治療も行われています。
自覚症状が軽度で,汎発性腹膜炎でなく,全身状態が良好であれば保存的治療が可能です。入院で絶食とし,抗菌薬の投与を行います。治療開始2~3日以内に症状の改善がみられない場合に手術を考慮します。
欧米では,非穿孔性虫垂炎に対する抗菌薬投与と虫垂切除を比較したランダム化比較試験が行われて,抗菌薬投与の虫垂切除に対する非劣性が示されています。しかし,保存的治療後の約20%に再発がみられました1)。
わが国においては保存的治療後の再発率は約30%で,再発リスクは18歳以下の若年者,来院時の白血球高値(1万3500/μL以上),CT画像上虫垂径9mm以上の腫大や虫垂周囲脂肪織への炎症波及などであったと報告されています2)。
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