日本老年医学会から,「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」の一環として,2017年7月に「高血圧編」が日本老年医学会雑誌1)に発表され,J-STAGEに全文が公開された。日本高血圧学会によるガイドラインでも高齢者高血圧や認知症の章が設けられているが,生命予後や脳心血管病への影響に関するエビデンスを中心にしたものである。一部,転倒・骨折予防,脱水や生活環境変化時,服薬アドヒアランスなどの記載があるが,高齢者の多様性への対応は不十分である。日本老年医学会のガイドラインは,高齢者の多様な状況(75歳以上,糖尿病,慢性腎臓病,認知症,頑健~フレイル~要介護~エンドオブライフなど)に応じた降圧治療の有用性に関するエビデンスの整理,降圧薬選択,降圧目標の推奨を示している。また,心血管病抑制効果以外に,認知機能や生活機能(ADLや手段的ADLなど)などへの影響も併せて検討している。
高齢者であっても積極的な降圧治療が有用であることは複数の研究で示されているが,高齢者は,余命,疾病を含む身体予備能力,精神機能,患者の嗜好(疾病や命に対する考え方など),ケアの目標などが,一般成人と比較して多様であるため,治療に伴うリスクとベネフィットとを個別に判断する必要がある。なお,19個のクリニカルクエスチョンに,高齢者における原発性アルドステロン症や睡眠時無呼吸は含まれていない。
【文献】
1) 日本老年医学会「高齢者の生活習慣病管理ガイドライン」作成ワーキング:日老医誌. 2017;54(3):236-98.
【解説】
楽木宏実 大阪大学老年・総合内科教授