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泌尿器科学[特集:臨床医学の展望2014]

No.4684 (2014年02月01日発行) P.68

筧 善行 (香川大学医学部泌尿器科学教授)

登録日: 2014-02-01

最終更新日: 2017-09-26

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パラダイムシフトの予感が漂う前立腺癌治療の2014年

Charles HugginsとClarence V. Hodgesが1941年に前立腺癌に対する抗男性ホルモン療法について発表して以来,進行前立腺癌に対する第一選択は抗男性ホルモン療法で一貫してきた。Huggins博士は後にノーベル医学・生理学賞を受賞しているが,まさに賞に値する発見であった。

1980年代後半になり,血清PSA(prostate specific antigen)テストが導入され,前立腺癌の早期発見率は格段に向上してきた。それに伴い,手術療法や放射線療法など局所療法の開発や改良が目覚ましい速度で進んでいるが,進行前立腺癌に対しては抗男性ホルモン療法を凌駕する治療法は久しく登場しなかった。

抗男性ホルモン療法は基本的にpalliative therapyの1つであり,一定期間を経て不応性ないしは抵抗性となる。この病態を去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer;CRPC)と呼ぶが,この病態の分子生物学的背景がかなり解明され,多くのケースでアンドロゲン受容体を介した増殖シグナル機構が超活性化していることが判明してきた。

2014年春以降に登場する予定のエンザルタミドは,従来のアンドロゲン受容体拮抗薬に比べ格段に阻害効果が強いだけではなく,アンドロゲン受容体の核内移行の阻止などの作用も有するため,CRPCで明らかな生存期間の延長効果が期待できる。また,テストステロンの生合成阻害薬であるアビラテロンは,副腎由来の男性ホルモン前駆体や前立腺癌細胞内のテストステロンを枯渇させるため,やはりCRPCで優れた効果が期待できる。さらに,CRPCに対する唯一の治療薬と言っても過言ではないドセタキセルに対して抵抗性を獲得した前立腺癌に対する新たな抗癌剤カバジタキセルが,間もなく我が国でも使用可能となる見込みである。

これらの新規薬剤を,いずれの時点でどのような組み合わせで投与するかについての議論が激しくなることが予想される。

限局性前立腺癌に対するロボット支援下腹腔鏡手術(いわゆるダ・ヴィンチ手術)は急速な広がりを見せているが,保険償還されている術式が全外科領域で唯一前立腺癌全摘除術のみであるのは大変もったいないことである。ダ・ヴィンチの特性がいっそう生かされる腎部分切除術や膀胱全摘術への適応拡大を求める動きが加速するであろう。

一方,進行腎癌に関してはすでに5剤の分子標的薬が投与可能となっているが,新たにもう1剤,VEGFR阻害薬であるパゾパニブが登場する予定である。現在,世界的に見て淡明細胞型腎細胞癌に対する第一選択薬はスニチニブであるが,有力な選択肢が増えることになる。

良性疾患に目を移すと,すでに勃起機能改善薬として適応承認のあるシルデナフィルの低用量製剤が前立腺肥大症に伴う下部尿路症状に対する治療薬として登場する。これまでの前立腺肥大症薬とはまったく異なった機序での治療薬である。

最後に,泌尿器科領域における再生医療の現状であるが,脂肪幹細胞を用いた腹圧性尿失禁治療がいよいよ臨床応用への現実的なステップを踏み出した。今後の展開が大いに期待される。

最も注目されるTOPICとその臨床的意義
TOPIC 1/前立腺癌に対する薬物療法:新時代の予感
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対して,強力なアンドロゲン受容体拮抗薬であるエンザルタミド,アンドロゲン合成におけるCYP17A阻害に関与するアビラテロンが2014年中に我が国で投与可能となるだけではなく,新規タキサン系薬剤であるカバジタキセルがドセタキセル抵抗性となった予後不良患者に投与可能となる見込みである。このほか,骨転移治療薬としてradium-223が大規模なグローバル試験を終了し,明らかな生存期間の延長効果を示しており,臨床導入間近となっている。

この1年間の主なTOPICS
1 前立腺癌に対する薬物療法:新時代の予感
2 ‌新規VEGFR–TKIの登場は進行腎癌患者の 福音となるか
3 勃起機能改善薬による前立腺肥大症治療
4 ‌ダ・ヴィンチ手術の適応拡大─ロボット支援 膀胱全摘術,腎部分切除術が先進医療へ
5 ‌幹細胞治療による尿失禁治療:実用化への道程

TOPIC 1▶‌前立腺癌に対する薬物療法:新時代の予感

去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する治療として,2008年にタキサン系薬剤であるドセタキセルが保険承認され,前立腺癌の治療は一歩前進した。ドセタキセル治療抵抗性となった後の有効な治療薬として,欧米ではすでにアビラテロン,エンザルタミド,カバジタキセルが導入され,我が国でも2014年に使用可能となる。

従来のcombined androgen blockade(CAB)療法における抗アンドロゲン作用よりさらに強力な抗アンドロゲン作用を持つ新規薬剤がアビラテロン,エンザルタミドである。

アビラテロンはアンドロゲン合成におけるCYP 17A阻害に関与する。アビラテロンではドセタキセル治療前後ともに,プラセボに比較して全生存期間(overall survival;OS)および無増悪生存期間(progression-free survival;PFS)の改善が見られた1)2)。17α-hydroxylaseとC17,20-lyaseの2つの酵素を阻害する作用があるアビラテロンはステロイドの補充が必須である。また,アンドロゲン受容体の核内移行阻害作用を持つエンザルタミドは,ドセタキセル治療後の有効性は示されており3),ドセタキセル治療前の第Ⅲ相試験の結果が待たれる。

新規タキサン系薬剤であるカバジタキセルは,細胞内の微小管に作用して細胞増殖を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する。ドセタキセル抵抗性となった転移性CRPC患者755名を対象としたカバジタキセルとミトキサントロンのRCT(randomized controlled trial)(TROPIC trial)では,カバジタキセルで有意にOSが延長した4)

さらに,骨転移に対する治療薬の開発も進んでいる。radium-223(Ra-223)は,カルシウム(Ca)やストロンチウム(Sr)と同様アルカリ土類金属に属しており,造骨性骨転移部位に移行しやすい性質がある。Ra-223から放出されるα線は,Sr-89が放射するβ線と比較し20倍もの生物学的損傷をもたらすことができる一方で,射程飛距離は約70μmと非常に短く正常骨髄の被ばく線量が抑えられるため,骨髄抑制が軽微である。

分子標的治療薬であるカボザンチニブは,肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor;HGF)の受容体であるMETと,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)の受容体であるVEGFRの両方を阻害するdual inhibitorで,多くのがん腫で有効性が確認されている。前立腺癌では特に骨においてMETの発現が亢進していることから,骨転移を抑制する可能性がある。前立腺癌領域の薬剤開発は飛躍的に進んでいるが,これら新規薬剤を含めた治療戦略を再構築することが今後の検討課題である。

◉文 献

1)Ryan CJ, et al:N Engl J Med. 2013;368 (2):138-48.

2)de Bono JS, et al:N Engl J Med. 2011;364 (21):1995-2005.

3)Scher HI, et al:N Engl J Med. 2012;367 (13):1187-97.

4)de Bono JS, et al:Lancet. 2010;376 (9747):1147-54.

TOPIC 2▶新規VEGFR–TKIの登場は進行腎癌患者の福音となるか

現在,我が国では転移性腎細胞癌に対し5種類(スニチニブ,ソラフェニブ,アキシチニブ,テムシロリムス,エベロリスム)の分子標的薬が使用可能である。さらに,おそらく2014年には,新規VEGFR-TKIであるパゾパニブが加わる予定である。

パゾパニブは転移性腎細胞癌患者に対するファーストライン治療において,スニチニブと直接比較検討したフェーズⅢ試験COMPARZ試験の結果,PFSにおける非劣性が証明された1)

患者はスニチニブ群とパゾパニブ群に1:1に割り付けられ,スニチニブは1日50mgから開始し4週間投与2週間休薬のスケジュール,パゾパニブは1日800mgから開始し毎日投与のスケジュールであった。主要評価項目としてPFSでパゾパニブの非劣性を証明するためのデザインを用いている。副次評価項目はOS,客観的奏効率,安全性,QOLであった。評価された患者の背景は,スニチニブ群(n=553),パゾパニブ群(n=557)の間で差はなかった。試験の結果,スニチニブ群のPFS中央値が9.5カ月(95%CI;8.3~11.1)に対し,パゾパニブ群は8.4カ月(95%CI;8.3~10.9)で,ハザード比1.047(95%CI;0.898~1.220)となり,当初設定されたハザード比の上限1.25を下回ったため,パゾパニブのスニチニブに対する非劣性が証明された。

安全性については,パゾパニブ群でALT異常が多く,スニチニブ群で疲労,手足症候群,血小板減少などが多く見られた。QOL評価においても多くの指標でパゾパニブ群のほうが高いという結果から,パゾパニブとスニチニブの有効性は同等であるが,安全性とQOLプロファイルに関してはパゾパニブのほうが良好であると結論づけられた。しかし,この結果においては有効性判定を42日目に行う一方で,QOL評価は28日目に行っていることもあり,スニチニブの4週間投与2週間休薬というスケジュールを考えると,スニチニブにやや不利な印象は否めない。

また,2012年より使用可能となったアキシチニブは国際共同フェーズⅡ試験の日本人サブグループ解析において,ファーストライン治療としても日本人に有効で,日本人以外のグループに比べてPFSが良好であることが示された。しかし,効能・効果に関連する使用上の注意として「抗悪性腫瘍剤(サイトカイン製剤を含む)による治療歴のない根治切除不能又は転移性の腎細胞癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない」との一文があるため,未治療例では使用できない。

一方で治療の選択肢が増えると,どの薬剤をどのような順番で用いて治療を継続していくのか,また逐次療法をどうするのかを考えることも非常に重要な問題である。現在,我が国のガイドライン上のアルゴリズムは十分とは言えず,日本人を対象としたアルゴリズムの確立が望まれるところである。また,分子標的薬特有の様々な有害事象に対しても,必要な減量や投与期間の工夫を行い,上手にマネージメントすることはもちろんであるが,1つの薬剤で病勢が進行しても,次の薬剤,その次の薬剤と治療を続けていくことで,より長い生存期間が得られるよう工夫していくことが医療者に求められている。

◉文 献

1)Motzer RJ, et al:N Engl J Med. 2013;369 (8):722-31.

TOPIC 3▶勃起機能改善薬による前立腺肥大症治療

高齢社会を迎えた現在,下部尿路症状(lower urinary tract symptoms;LUTS)を引き起こす最も一般的な疾患として,前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH)が挙げられる。BPHの有病率は高く,加齢とともに増加する。

BPHは疾患の進行に伴い,①前立腺の解剖学的増大,②排尿障害を主とした臨床症状,③尿流動態から見た下部尿路通過障害(閉塞),が出現するが,さらに通過障害に起因する膀胱排尿筋機能の変化などが出現し,これらが相互に関連して症候性BPHが疾患として成立する。治療法は重症度に応じて経過観察,薬物療法,手術療法などが行われる。薬物療法ではα1遮断薬,抗アンドロゲン薬,5α還元酵素阻害薬が用いられている。α1遮断薬は尿道抵抗を低下させる作用を持ち,前立腺腺腫を縮小させる作用はないが,その効果が即効性であることから第一選択薬である。抗アンドロゲン薬,5α還元酵素阻害薬は前立腺腺腫を縮小させる作用を有するが,勃起障害の副作用があることに加え,効果発現までには数カ月にわたる服用が必要であり,即効性は期待しづらい。

最近,勃起機能改善薬であるPDE5阻害薬がLUTSを改善させるという成績が相次いで報告され,我が国では辻村ら1)がLUTSと勃起不全(erectile dysfunction;ED)を併発したBPH患者に対して,α1遮断薬にPDE5阻害薬であるタダラフィルを追加することで症状が改善することを報告している。米国食品医薬品局(FDA)も2011年10月にタダラフィルについて,BPHおよびBPHとEDを併発している患者への適用を承認した。RCTによる検証では,タダラフィル投与群ではプラセボ投与群に比べ有意にBPHの症状が改善した。また欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでも,LUTSを有する患者に対する推奨治療薬となっている(グレードA)2)

なぜ,勃起機能改善薬でLUTSの改善が認められるかについては,PDE5阻害薬は陰茎海綿体を弛緩させ勃起を促すと同様に,膀胱や前立腺部の血流を改善させるのが1つの原因と考えられている。また,前立腺間質細胞の増殖抑制効果を指摘する報告もある。タダラフィルは間もなく薬価収載されると考えられ,BPH患者への治療の選択肢が増えると期待される。

◉文 献

1)辻村 晃, 他:泌外. 2011;24(3):385-90.

2)Oelke M, et al:Eur Urol. 2013;64(1):118-40.

TOPIC 4▶‌ダ・ヴィンチ手術の適応拡大 ─ロボット支援膀胱全摘術,腎部分切除術が先進医療へ

ロボット手術の有用性については論を俟たない。患者への侵襲が小さいのはもちろんのこと,人の目の能力を増幅させる明るい3次元の拡大画像と,手ぶれをなくしたり可動域を広げたりと人の手の能力を補うサージカルシステムによって,今までの開腹手術とは比べものにならないほどの精緻な手術が達成できる。すでに欧米では,婦人科や消化器・呼吸器・心臓血管外科などの様々な領域でその有用性が評価されている。

我が国でも,本格的なロボット時代が到来しつつある。2013年には我が国の手術支援ロボット保有台数は140台を超え,アジアでは韓国を抜き第1位,世界でも米国に次ぐ第2位のロボット大国になった。米国では前立腺癌手術の大半がすでにロボット手術で施行されており,その有用性は確立されていると言っても過言ではない1)

我が国では他の領域に先駆けて2012年4月にロボット支援前立腺癌全摘除術が保険適用となり,その後施行件数は急激に増加している。泌尿器科領域では,前立腺癌手術以外にもその有用性を発揮できる手術が多くある。それらの中で,2014年にはロボット支援膀胱全摘術および腎部分切除術が先進医療として認められる見込みである。

膀胱全摘術は泌尿器科のメジャー手術の1つである。前立腺同様,膀胱も骨盤内に存在するため通常の開腹術では非常に視野が悪く,アプローチが難しい。このような手術こそ,ロボット手術のメリットを最大限に生かすことができる。

膀胱全摘術では2012年4月に腹腔鏡下手術が保険適用となった。腹腔鏡下手術の発展型であるロボット手術では,さらに有用性が高いことは明らかである。出血量の軽減はもちろん,より緻密な手術で性機能保持のための勃起神経の温存も高レベルで実現できる。また,腸管を空気にさらす時間が短くなるため,術後の腸管合併症の確率も減少できるなど,そのメリットは少なくない。

以前は腎癌に対する標準手術は患側の腎臓全摘であった。しかし近年,特に若年者において可能な限り部分切除を行うことで少しでも腎機能を温存したほうが,その後の生命予後に有利であるとの認識が一般的になってきた2)。また長期観察の結果,部分切除術でも全摘術と同等の制がん効果があることも分かってきた。そのため,最近では腎部分切除術の施行件数が増加してきている。

腎部分切除術は摘出物が大きくないため,傷の小さい腹腔鏡下手術の非常に良い適応である。しかし,止血のための血管や腎実質縫合,尿路開放時の処置などは,従来の腹腔鏡下手術では手術の際に使用する鉗子の自由度がかなり制限されるため,非常に困難をきわめているのが現状である。

まさにその不自由さを解決するものが,自由度の高いロボットアームである。あらゆる角度から縫合針が刺入可能であり,一番の難所である縫合作業をかなり容易に施行可能である。このような縫合作業のストレスを軽減し,楽に確実に行うことができるのもロボット手術の大きな特徴である。今まで腎摘除術あるいは開腹による部分切除術が行われていた症例も,ロボット手術により正常機能を温存する理想的な低侵襲手術が実現する。

そのほかにも,例えば精密な縫合操作が必要とされる腎盂形成術などの形成術や,神経温存後腹膜リンパ節郭清術などの機能温存と根治性の両立が重要な手技にも,ロボット手術の利点を生かせるのは明らかである。泌尿器科領域のみならず他科の領域においてもその応用範囲は広く,今後はメジャー手術のかなりの部分をカバーするようになるのは間違いない。人間の能力の限界を広げることで,我々外科医の寿命を延ばせることが一番のメリットかもしれない。

◉文 献

1)Robertson C, et al:BJU Int. 2013;112 (6):798-812.

2)Zini L, et al:Cancer. 2009;115(7):1465-71.

TOPIC 5▶幹細胞治療による尿失禁治療:実用化への道程

腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence;SUI)は腹圧負荷時に尿が漏れるもので,生命に影響を及ぼすことはないが,生活の質を著しく損なうQOL疾患である。女性のSUIに見られる尿道括約筋機能障害の原因として,括約筋骨格筋細胞の減少,尿道平滑筋細胞の減少,血流障害,除神経などが示唆されている。また,男性にもSUIは見られるが,その主な原因は前立腺に対する手術療法(経尿道的前立腺手術,前立腺全摘術)に起因する医原性の尿道括約筋機能障害である。

尿道括約筋機能障害に対しては理学療法(骨盤底筋体操),βstimulatorの内服といった治療が行われるものの,中等症以上の症例に対する保存的治療は無効である。根治を目指すためには減少した筋細胞,血管網および神経支配の回復が必要となるが,様々な組織への分化能を有する幹細胞(SCs)を用いた再生治療は,尿道括約筋機能障害の根本的な治療となりうる可能性を秘めている。

マウスの尿道括約筋/神経障害モデルに対する再生研究は,筋由来幹細胞(MDSCs)を用いて2002年に初めて報告された。その後はMDSCsを中心に再生研究が行われてきたが,2010年に脂肪由来幹細胞(ADSCs)を用いた基礎研究が報告されて以降,骨髄由来幹細胞,臍帯血由来幹細胞(HUCBs)といった,他の幹細胞を用いた基礎研究の報告も相次いでなされている。

基礎研究では尿漏出圧や括約筋成分の回復のほか,移植したSCsの生着が確認された。移植されたSCsは失われた筋,血管,神経に分化するほか,血管新生などを促すgrowth factorを分泌するparacrine機構も介して,血管および筋組織を増大するものと考えられている。

海外ではMDSCs(7 studies),HUCBs(1 study)を用いた臨床研究が行われ,参加者の大半で症状の改善が見られる良好な結果が報告されている1)。我が国では2011年5月からGotohら2)(名古屋大学)により,前立腺全摘後のSUIに対し経尿道的にADSCsと脂肪組織を注入する臨床試験が開始された。2013年7月には11例に対する1年後の治療成績が報告され,8例のSUIの改善(うち1例はSUIが完全に消失)が確認された。SCsを用いたSUIに対する再生治療はまだ臨床研究の段階ではあるが,将来の尿失禁治療の一翼を担う有望な治療法であると考えられる。

◉文 献

1)Lin CS, et al:Stem Cells Dev. 2012;21 (6):834-43.

2)Gotoh M, et al:Int J Urol. 2013. doi: 10.1111/iju.12266.[Epub ahead of print]

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