筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,有名人が「氷水をかぶるバケツチャレンジ」で有名になった神経難病である。従来,認知症は合併しないとされてきた。しかし,分子遺伝学の発展とともに,家族性ALSの家系に認知症,特に前頭側頭型認知症の患者が認められることや,同一患者に両疾患が発症すること,また,家族歴がない孤発例も報告されている。
原因遺伝子としてubiquilin-2,p62,valosin-containing-protein(VCP)をコードする遺伝子が近年次々と同定されている。このうち,VCP遺伝子異常は自験例を含めて,わが国からの報告が続いている1)2)。家系内や同一遺伝子変異を有していても,ALS発症9年後に認知症が出現,認知症のみ,ALSと認知症が同時に発症する場合など,様々である。
脳の画像所見は典型的ALSでは異常がみられないが,VCP関連ALSでは海馬や前頭葉の萎縮がみられる2)。認知症の存在は,患者への説明・理解を困難にし,家族の受容や介護にも影響するため,臨床の現場では対応が容易ではない。画像や遺伝子検査を参考に病態を早期に把握することが重要と考えられる。
【文献】
1) Hirano M, et al:Neurobiol Aging. 2015;36(3): 1604.
2) Hirano M, et al:Eur Neurol. 2017;78(1-2):78-83.
【解説】
平野牧人 近畿大学神経内科准教授