【質問者】
桃原哲也 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院循環器内科部長
ステント血栓症は,冠動脈へ留置した金属製ステントに血栓形成が起こり,最終的に急性閉塞してしまう病態です。急性心筋梗塞を生じ死亡率が高い病態で,第一世代の薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)では,年率0.2%程度発生するとされています。ステント血栓症の世界的な定義としては,学術研究コンソーシアム(academic research consortium:ARC)の定義があり,「definite」と「probable」と「possible」に分類されます。ステント血栓症発生には,血栓形成に関わる古典的な「Virchowの3原則」である,血流のうっ滞,血管壁,凝固が挙げられます。その中で,ステントのデザインも血栓形成に関連することが知られており,厚いものや角張ったものは,血管壁で乱流を起こし血小板凝集を引き起こしやすくします。
ステント血栓症予防のため,現在は留置後から一定期間の2剤抗血小板療法を行うことになっています。クロピドグレルを定められた期限により休薬した後に,アスピリン製剤を自己中断し,その直後に超遅発性ステント血栓症を発症したDES留置症例が報告されました(Lancet. 2004)。DESでは,ベアメタルステントとは異なり,半永久的な2剤抗血小板療法が必要である可能性が指摘されました。第一世代DESでは,ステント血栓症の主な要因として,好酸球増加症候群(hyper eosinophilic syndrome)による治癒遅延(delayed healing)というポリマーによる血管修復の遅延が挙げられていました。
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