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小児神経疾患の中枢神経への治療法の開発【2000年代に入り様々な手法が開発され,改良・進化を続けている】

No.4879 (2017年10月28日発行) P.52

衞藤 薫 (東京女子医科大学小児科)

登録日: 2017-10-27

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小児神経領域において,主に先天代謝異常症に対する治療として従来の造血幹細胞移植に加え,1998年にわが国でゴーシェ病における酵素補充療法が認可され,現在8疾患のライソゾーム病に対して酵素補充療法(10種類)が施行されている。しかし,本治療は酵素蛋白質が血液脳関門を通過しないため,中枢神経系への治療の開発が期待された。

2000年代に入り,中枢神経系への低分子治療として,基質合成抑制療法がニーマン・ピック病C型(NPC),ゴーシェ病Ⅰ型に,シャペロン療法がGM1ガングリオシドーシスやゴーシェ病で行われている。脳室内への酵素補充療法に関しても,ムコ多糖症Ⅱ型や神経セロイドリポフスチン症(CLN 2)で臨床治験が進み,その有効性が報告されつつある。遺伝子治療は,1990年に世界で初めて先天性免疫不全症であるアデノシンデアミナーゼ欠損症を対象に行われたが,遺伝子の導入や発現効率,免疫反応などの問題により,幹細胞治療が注目されていった。その後,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターやレンチウイルスベクターを中心に改良が進められた。

小児神経領域では,2015年にわが国で芳香族アミノ酸脱炭酸酵素欠損症に対し2型AAVベクターを用いた遺伝子治療を施行し,有効性が確認され,そのほかのライソゾーム病にも遺伝子治療の臨床治験が進められている。当科では,ライソゾーム病や神経変性疾患の診断,ファブリー病やポンペ病への酵素補充療法,NPCへの基質合成阻害療法などの治療を施行している。

【解説】

衞藤 薫 東京女子医科大学小児科

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