メルケル細胞癌は,高齢者の露光部に好発する皮膚の神経内分泌系悪性腫瘍であり,その悪性度は高く,予後不良である。治療は,一般的には外科的切除と放射線療法が選択されるが,進行例/転移例に関しては化学療法も選択される。しかし,わが国の現状において,生命予後を改善するものは存在せず,施設や症例ごとにシスプラチン,エトポシド,カルボプラチンなどを使用しているのが実情である。
大部分のメルケル細胞癌の発症には,メルケル細胞ポリオーマウイルスが強く関連し,そのウイルス由来のがん蛋白による免疫原性から生体内で様々な免疫応答を引き起こす。臨床的にも自然消退例が少なからず報告されており,他種の悪性腫瘍と同様に,生体内における抗腫瘍免疫応答の重要性が注目されてきた。
これまで多くの臨床研究/治験が行われてきたが,2016年に入り免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体ペムブロリズマブと,抗PD-L1抗体アベルマブのメルケル細胞癌に対する高い奏効率が報告された1)2)。アベルマブに関しては,17年3月に米国では既に承認を受けており,わが国でも17年9月に製造販売承認を取得した。メルケル細胞癌患者の治療の重要な選択肢となることが期待されている。
【文献】
1) Nghiem PT, et al:N Engl J Med. 2016;374(26): 2542-52.
2) Kaufman HL, et al:Lancet Oncol. 2016;17(10): 1374-85.
【解説】
永瀬浩太郎 佐賀大学皮膚科講師