わが国では小児期から学校検診,職域健診,特定健診に至るまで検尿を中心とする腎健診が行われ,慢性腎炎による透析導入患者数の減少など,大きな成果を示してきた。慢性腎臓病(CKD)の概念出現以来,日本腎臓学会では『CKD診療ガイド』や『CKD診療ガイドライン』の出版等を通してCKD診療の標準化・普及にも取り組んでいる。
日本腎臓学会腎臓病対策委員会腎健診対策小委員会は「腎健診受診者に対する保健指導,医療機関紹介基準に関する提言」を新たに発表した。この提言の骨子は,①尿検査受診者で尿蛋白±の者は保健指導の対象とする,②腎健診受診者のeGFRによる医療機関受診勧奨はeGFR 45未満(CKDステージG3b)以降とする,③CKDの発症は生活習慣病重症化の指標である,の3つである。微量アルブミン尿が心血管病と強く関連することが証明されており,定性試験での尿蛋白±例の60%以上が微量アルブミン尿以上を呈することが示され,蛋白尿(±)は,生活習慣の改善や保健指導の対象と位置づけられている。
折しも,標準的なCKDの保存療法を現場に浸透させることを目的とする腎臓病療養指導士制度が2017年度から開始される。看護職,管理栄養士,薬剤師の3職種を対象とするものである。腎健診による早期発見から重症化予防対策まで,多職種連携による取り組みが期待される。
【参考】
▶ 日本腎臓学会腎臓病対策委員会腎健診対策小委員会:日腎会誌. 2017;59(2):38‒42.
【解説】
佐々木 環*1,柏原直樹*2 *1川崎医科大学腎臓・高血圧内科教授 *2同主任教授