(東京都 N)
エキシマレーザーの開発によって第一世代のPRK(photorefractive keratectomy)が考案され,その後フラップを作製する第二世代のLASIK(laser in situ keratomileusis)が普及して,現在の角膜屈折矯正手術の礎となっています。
近年,ReLEx(refractive lenticule extraction) SMILE(small incision lenticule extraction)が,第三世代の角膜屈折矯正手術として注目されています。フェムト秒レーザーのみを用いて約3mmの小切開創から角膜をシート片として抜去する手技で(図1),フラップレスサージェリーとして長期予測性や安定性に優れており,角膜生体力学特性やオキュラーサーフェスへの影響も少なく,外傷に対する組織強度も高いことが報告されています1)2)。眼球運動に伴う照射ずれ,周辺切除効率低下,角膜含水率低下がなく,高次収差(特に球面収差)の増加も少ないことも知られています(表1)3)。そのような理論的な背景から世界的に確実に普及しつつあり,特にアジア諸国では急速な成長を遂げています。
多くのメリットを享受できる手術で,特にLASIK後に問題となりやすい再近視化(regression)が生じにくく,長期的に見ても屈折の変動が少ない点や患者の不満となりやすいドライアイ症状を生じにくい点が評価されているように思います。最近ではレーザーエネルギー設定や手術手技の改良によって4),さらに安全性が向上し,より完成度の高い術式となりつつあります。
その一方,デメリットとして,虹彩認証による眼球回旋補正がなく,カスタム照射ができない点や,術後早期の視力回復がやや遅い傾向がみられる点が挙げられます。またSMILE手術は学術的に注目度が高い一方,フェムト秒レーザー装置そのものが高価であることから,限定された施設のみに導入されています。
失明するようなリスクは考えられず,とても安全性の高い手術であることが,既存の文献からも証明されています5)。日本白内障屈折矯正手術学会が主導した国内多施設共同研究の結果からも,平均裸眼視力が1.32,平均矯正視力が1.48であり,重篤な合併症を認めていません6)。もちろん最新の術式であるため,今後さらに多施設・多数例での長期データの蓄積が必要だと思います。それでもフラップ作製を不要とする手技はドライアイを生じにくい上,屈折の変動も少なく,最先端の角膜屈折矯正手術として相当ポテンシャルが高いため,新たな選択肢の1つとして期待されています。
【文献】
1) 神谷和孝:あたらしい眼科. 2014;31(5):705-7.
2) 神谷和孝:眼科手術. 2015;28(3):369-71.
3) Kamiya K, et al:Br J Ophthalmol. 2013;97(8): 968-75.
4) Kamiya K, et al:Br J Ophthalmol. 2015;99(10): 1381-7.
5) Kamiya K, et al:Am J Ophthalmol. 2014;157 (1):128-34.
6) Kamiya K, et al:Am J Ophthalmol. 2017;175: 159-68.
【回答者】
神谷和孝 北里大学医療衛生学部視覚機能療法学専攻 視覚生理学教授