【質問者】
伊藤智範 岩手医科大学内科学講座循環器内科分野/医学教育学講座地域医療学分野教授
冠動脈イベントを非侵襲的に評価する画像診断法として,冠動脈CT検査と心臓MRI検査があります。心臓MRI検査のうち,非造影T1強調画像法にて冠動脈プラークの組織性状の評価を行い,イベント発生を予測する研究に注目が集まっています。この非造影T1強調画像を用いた冠動脈イベント評価が有用な対象は,冠動脈疾患二次予防患者です。この患者群を対象とした前向き観察研究で1),非造影T1強調画像法によって冠動脈に白く輝くプラーク(high-intensity plaque:HIP)を有し,かつプラーク輝度が心筋の輝度に比べて1.4倍以上高い群(高輝度HIP群)は,中央値55カ月の観察期間中に25%と高率に冠動脈イベント(心臓突然死,非致死的心筋梗塞,高感度トロポニンTが上昇した不安定狭心症,心筋虚血が証明された冠動脈形成術)が発生しました。一方,プラーク輝度が心筋と同等から1.4倍未満の患者(中等度HIP群)では13%のイベントが発生し,プラークの輝度が心筋と同等以下の患者(非HIP群)ではほとんどイベントが発生しませんでした。さらに,HIPを有する冠動脈病変に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)を行った場合,HIPの輝度が1.3~1.4倍以上であれば高率にPCIに伴う周術期心筋障害が発生することも報告されました2)3)。以上の結果から,心筋の輝度と比べて1.4倍以上の輝度を持つ冠動脈HIPは,冠動脈イベントおよびPCIに伴う周術期心筋障害を高率に発症するハイリスクプラークと言えます。
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