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(1)トラマドール製剤の有効性と問題点─ガイドラインからの視点も含めて

No.4900 (2018年03月24日発行) P.24

山口重樹 (獨協医科大学医学部麻酔科学講座教授)

Donald R. Taylor (Comprehensive Pain Care, P.C., Pain Management, Clinical Research and Office Based Opioid Addiction Treatment)

登録日: 2018-03-23

最終更新日: 2018-03-20

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トラマドールはノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用および代謝産物によるオピオイド受容体作動性作用を有する中枢性鎮痛薬である

トラマドールは相対的に安全な鎮痛薬であるが,他のオピオイド鎮痛薬と同様に扱う

トラマドールの薬理作用には個人差がある

アセトアミノフェンの配合の有無,トラマドールの含有量,速放・徐放の違いなどを考慮して,トラマドール製剤を使いわける

1. 慢性疼痛におけるオピオイド治療

近年,様々なオピオイド鎮痛薬がわが国においても認可されている。そして,非がん性の慢性疼痛(以降,慢性疼痛)に使用できるオピオイド鎮痛薬も増え,痛みの診療におけるオピオイド治療の重要性は増している。しかしながら,欧米では,慢性疼痛におけるオピオイド治療の深刻な問題が表面化し,オピオイド鎮痛薬は推奨,積極的使用から,振り返り,反省,規制へと変わりつつある。そのような状況下で,オピオイド鎮痛薬の1つであるトラマドールは,ガイドライン等で他の強オピオイド鎮痛薬(モルヒネ,オキシコドン,フェンタニル,ヒドロモルフォン等)と区別して扱われるようになっている。その理由としては,強オピオイド鎮痛薬と比べ,乱用に好まれにくく,副作用も軽度,退薬症候が軽微である,投与量に上限がある,高用量化・長期化が少ないなどの点が挙げられている。

海外の神経障害性疼痛の薬物療法ガイドラインの変遷を表1 1)~3)に示すが,2015年からトラマドールは他の強オピオイド鎮痛薬と切り離され,第二選択薬の位置づけになっている。わが国においても,2016年に発表された「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」4)から,トラマドールは第二選択薬とされている(2012年に発表された初版では第三選択薬であった)。

   

WHOは表2に示すごとく5),慢性疼痛に対する薬物療法においてトラマドールを重要な鎮痛薬として示している(この背景には,強オピオイド鎮痛薬の使用を極力避けるべきというメッセージがあるかもしれない)。わが国においても,今後,慢性疼痛に対するトラマドールの処方が増えていく可能性が大いに予想される。

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