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重症再生不良性貧血に対するトロンボポエチン受容体作動薬療法【新しい作用機序を有する約20年ぶりの新薬】

No.4904 (2018年04月21日発行) P.49

石山 謙 (金沢大学血液内科講師)

中尾眞二 (金沢大学血液内科教授)

登録日: 2018-04-19

最終更新日: 2018-04-16

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抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリン(CsA)の併用療法は重症再生不良性貧血(SA A)に対する標準療法である。厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班の「再生不良性貧血診療の参照ガイド」においても,40歳未満でHLA一致同胞がいない患者と40歳以上の患者に対しATG+CsA療法が第一選択として推奨されている。しかし,この治療による輸血の離脱は60%前後であり,有効性がさらに高い治療の開発が望まれてきた。特にわが国では,ウマATGよりも効果が劣るとされるウサギATGに使用が限られるため,治療効果を増強させる工夫が必要とされていた。

トロンボポエチン受容体作動薬のエルトロンボパグ(レボレード®,ELT)は,治療抵抗性の特発性血小板減少性紫斑病に対する治療薬として,わが国では2010年に発売された。その後,米国における臨床試験により,難治性のAAに奏効することが報告された。そして17年,SAA患者に対する初回ウマATG+CsA療法とのELT併用療法の寛解率が約90%という画期的な成績が報告された1)

わが国においては17年8月,ELTの保険適用が世界に先駆けてAAに拡大され,SAA患者に対する初回ATG+CsA療法への併用が可能となった。ただし,70%という奏効率が確認されたわが国での治験は少数例(10例)のデータであり,また最重症のAA症例に対する有用性は不明であることから,今後症例数を重ねて検討をする必要がある。

【文献】

1) Townsley DM, et al:N Engl J Med. 2017;376(16): 1540-50.

【解説】

石山 謙*1,中尾眞二*2 *1金沢大学血液内科講師 *2同教授

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