抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリン(CsA)の併用療法は重症再生不良性貧血(SA A)に対する標準療法である。厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班の「再生不良性貧血診療の参照ガイド」においても,40歳未満でHLA一致同胞がいない患者と40歳以上の患者に対しATG+CsA療法が第一選択として推奨されている。しかし,この治療による輸血の離脱は60%前後であり,有効性がさらに高い治療の開発が望まれてきた。特にわが国では,ウマATGよりも効果が劣るとされるウサギATGに使用が限られるため,治療効果を増強させる工夫が必要とされていた。
トロンボポエチン受容体作動薬のエルトロンボパグ(レボレード®,ELT)は,治療抵抗性の特発性血小板減少性紫斑病に対する治療薬として,わが国では2010年に発売された。その後,米国における臨床試験により,難治性のAAに奏効することが報告された。そして17年,SAA患者に対する初回ウマATG+CsA療法とのELT併用療法の寛解率が約90%という画期的な成績が報告された1)。
わが国においては17年8月,ELTの保険適用が世界に先駆けてAAに拡大され,SAA患者に対する初回ATG+CsA療法への併用が可能となった。ただし,70%という奏効率が確認されたわが国での治験は少数例(10例)のデータであり,また最重症のAA症例に対する有用性は不明であることから,今後症例数を重ねて検討をする必要がある。
【文献】
1) Townsley DM, et al:N Engl J Med. 2017;376(16): 1540-50.
【解説】
石山 謙*1,中尾眞二*2 *1金沢大学血液内科講師 *2同教授