男性性機能障害(SD)は,精巣因子,精路因子に次ぐ男性不妊症の第3の原因である。特に生殖年齢層に当たる性機能障害患者では深刻な問題となっており,最近の少子化現象の隠れた原因の1つでもある。勃起障害(ED),射精障害(EjD)の2つがSDの90%以上を占めるが,性欲低下,性嫌悪症,オルガズム障害なども存在する。これらの障害には鑑別診断と各病態に合った適切な治療が重要である。
男性不妊症(male infertility)の原因として,精子数の減少(または無精子症)や精子運動性の低下がよく知られている。また,この原因として精巣そのものの障害(精巣因子)や精管などの精子輸送路の閉塞(精路因子)が挙げられる。
一方,男性性機能障害(sexual dysfunction:SD)も男性不妊症の重要な原因であることは,国民一般はもとより医療関係者にもあまり知られていない。男性不妊症の治療を積極的に行っている全国10の大学病院を対象に1996〜98年に施行された調査(厚生省心身障害研究・厚生科学研究)1)〜3)では,男性不妊症4076名のうち,SDが原因だと考えられた症例は203名(5%)で,精巣因子3306名(81%),精路因子567名(14%)に次ぐ第3の原因であることが判明している(図1)。
男性性機能は,①性欲(性的興奮),②勃起,③性交,④射精,⑤極致感(快感,オルガズム),に大別される。通常は①〜⑤までが順次連係して発現することで,初めて男性性機能が正常であると考えられ,このうち1つ以上欠けるか,もしくは不十分なものを「男性性機能障害(SD)」と呼んでいる。具体的には,性欲低下,性嫌悪症,勃起障害(erectile dysfunction:ED),射精障害(ejaculatory dysfunction:EjD)などの病態がある(表1)。日常臨床で見受けられる頻度としてEDが最も多く,次いでEjDである。筆者が過去27年間において男性性機能外来で経験した症例ではEDが3012名,EjDが864名であった。
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