エリスロポエチン(EPO)は,腎臓の尿細管周囲間質に存在する神経堤由来線維芽細胞にて産生される
慢性腎臓病(CKD)患者では,Hb値10.0g/dL未満の貧血が認められるものの,血中EPO濃度が50mIU/mL未満であれば腎性貧血として矛盾しないと判断される
成人の保存期CKD患者の場合,維持すべき目標Hb値は11.0g/dL以上13.0g/dL未満とし,複数回の検査でHb値11.0g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案する
エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)は,胎児期には肝臓が主な産生臓器であるが,成人では約90%が腎臓で産生される1)。特に,腎臓の尿細管周囲間質に存在する神経堤由来線維芽細胞にてEPO産生が行われる2)。
EPOは貧血状態(低酸素状態)時に産生が亢進し,造血系細胞に働きかけ赤血球を増加させ,酸素運搬能を向上することにより虚血状態を改善する。そのため低酸素状態を感知するシステムが必要であり,その1つに低酸素応答性転写因子(hypoxia inducible factor:HIF)を介した経路がある3)。通常の酸素下ではprolyl hydroxylase(PHD)は活性化されておりHIF-αは水酸化され,続いてvon Hippel Lindau蛋白(pVHL)にて分解される。その一方,低酸素下ではPHDの活性化が著しく低下し,分解されなかったHIF-αは核内の標的遺伝子転写を調整し,EPOの発現を誘導する(図1)。このようにPHDは低酸素状態を感知するセンサーである。