アナフィラキシーに関するニュースを耳にすることが多くなってきた。アナフィラキシーは「アレルゲン等の侵入により,複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危機を与え得る過敏反応」1)であり,年齢を問わず誰にでも起こりうる重大な疾患として認知度も上がってきた。
しかし,1つ知っておくべきは,ニュースで知るアナフィラキシーのほとんどは小児のケースであり,逆に言えば小児における致死的なアナフィラキシーはきわめて稀であるということである。アナフィラキシーによる死亡の大半はハチ刺傷と医薬品によるもので,そのほとんどは成人例であり,年間60例前後と報告されている2)。つまり,小児,成人を問わずアナフィラキシーの原因の多くは食物であるが,致死的症例のほとんどは成人のハチ毒アレルギーと薬物過敏によるものなのである。ハチ刺傷による死亡例はアドレナリン(エピペン®)自己注射の普及により減少傾向にあるが,昨今は医薬品によるアナフィラキシーが増えており,今後は多彩な生物学的製剤の登場によりリスクがさらに増大する可能性があることも覚えておく必要がある。
【文献】
1) 日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策特別委員会, 編:アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会, 監. メディカルレビュー社, 2014.
2) 厚生労働省:人口動態統計「死亡数, 性・死因(死因基本分類)別」.
【解説】
中村陽一 横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンターセンター長