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腎硬化症[私の治療]

No.5066 (2021年05月29日発行) P.40

古波蔵健太郎 (琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部診療教授/部長)

登録日: 2021-05-28

最終更新日: 2021-05-25

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  • 腎硬化症は,一般的に高血圧性腎硬化症と同義に扱われることが多いが,加齢,糖・脂質代謝異常,喫煙などが複合的に関与した病態であり,超高齢社会の日本において今後も増加が予想される。

    ▶診断のポイント

    一般的に高血圧の罹病期間が長い中高年の患者で腎障害を認めた場合,腎炎など他の腎実質性疾患を除外した上で診断される。蛋白尿は軽微で血尿を認めることは少ない。蛋白尿が多い場合は腎障害の進行速度が速いことが多く注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    腎硬化症は,病理学的には腎小細動脈硬化が特徴で,糸球体高血圧と虚血の2つの異なるタイプの糸球体血行動態異常が腎障害進展機序として重要な役割を演じている。これらの2種の糸球体血行動態異常が1個の腎臓に種々の割合で不均一に分布し,病態や患者ごとにその割合が異なる点を考慮して,治療の最適化を考えることが重要である1)2)

    まず治療開始時に,①降圧目標,②降圧薬の種類の2点について症例ごとに考える。具体的には,「高血圧治療ガイドライン2019」をベースに,蛋白尿陰性例では虚血主体の病態を想定して最初の降圧目標を140/90mmHg未満,使用薬剤はカルシウム拮抗薬,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の順に考える。浮腫がある場合には利尿薬の併用を考慮する。一方で尿蛋白陽性例では,糸球体高血圧が腎障害に関与していることを想定して降圧目標130/80mmHg未満,第一選択薬としてRA系阻害薬の使用を考慮する。まずは降圧目標の達成を第一に考え,次に病態に応じた薬剤の種類を考える。

    現在の血圧レベルと降圧目標との間に大きな差がある場合(本稿ではおよその目安として収縮期血圧160mmHg以上とした)は,単剤で降圧目標を達成できる可能性は必ずしも高くない。潜在する虚血を悪化させるリスクの軽減も考慮し,確実な降圧効果が期待できる長時間作用型のカルシウム拮抗薬をまず使用し,降圧目標値に近くなるまでは可能な限り増量する。降圧目標近くまで降圧できた場合や,まだ達成できていない場合の次の一手として,RA系阻害薬を加えるが,さらに十分な降圧が必要な場合は,早期から利尿薬の併用を検討する。降圧目標に近づいてきたら,上述の蛋白尿の有無を目安に使用薬剤を検討する。高尿酸血症合併例では,積極的に尿酸降下薬の併用を考慮する。

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