夜間蓄尿で評価したナトリウム(Na)/カリウム(K)比が、一般住民の腎機能低下リスク、低下速度と相関することが明らかになった。JA静岡厚生連遠州病院の髙瀨浩之氏らがHypertension Research誌で9月16日に報告した。
以前からNa摂取過多に伴う腎機能低下[Sugiura T, et al. 2018]や尿中K排泄量高値に伴う腎機能維持[Kieneker LM, et al. 2016]などは報告されていたが、Na、K両者の関係を合わせた検討は初めてだという。
今回の解析対象となったのは、遠州病院(静岡県)にて健診受診の、「推算糸球体濾過率(eGFR)≧60mL/分/1.73m2」(±アルブミン尿)だった連続登録1万4549名である。
平均年齢は51.1歳、男性が59.6%を占めた。
eGFR平均値は80.8mL/分/1.73m2、蛋白尿陽性例は1.8%だった。
また高血圧を23.1%に認め、糖尿病も7.7%、脂質異常症は41.0%に認められた。
これら1万4549名を対象に、夜間尿で評価した観察開始時「Na/K比」と、その後eGFRがCKD相当値(<60mL/分/1.73m2)まで低下する(eGFR基準CKD)リスクとの相関を調べた。
その結果、61.4カ月間(中央値)観察後、14.4%が「eGFR基準CKD」を呈した(25.9/1000人年)。
そこで観察開始時「Na/K比」四分位群に分けて比較すると、四分位群が1つ高くなるに従い、「eGFR基準CKD」発生率は有意に高くなっていた。
さらに「Na/K比」は、観察開始時の「年齢・性別」や「BMI」、さらに血圧などの各種「代謝指標」「喫煙」「蛋白尿」「eGFR」で補正後も、「eGFR基準CKD」発症の有意な予知因子として残った。
対数変換「Na/K比」「1単位」高値に伴うハザード比は2.01(95%信頼区間:1.66-2.45)である。
この結果は、高血圧合併の有無で分けて検討しても変わらなかった。
同様に高血圧合併の有無を問わず、eGFR年間低下速度も、観察開始時の尿中「Na/K比」が高いほど有意に大きくなっていた。
髙瀨氏らは尿中「Na/K比」高低と腎機能低下の間には因果関係があると考察した上で、食事における「Na/K比」が一般住民のCKD予防に重要な役割を果たす可能性を指摘している。
本研究著者たちに開示すべき利益相反はないとのことである。