▶ 関節液の提出項目がワカル
▶ 関節液の細胞数で鑑別を挙げることがデキル
▶ 関節液を提出する際のポイントがワカル
▶ 主訴:発熱・右膝痛
▶ 現病歴:来院3日前より悪寒および右下腿の疼痛を自覚した。来院当日、右膝の疼痛が改善しないため、当院整形外科を紹介受診した
▶ 既往歴:高血圧、高尿酸血症
▶ 嗜好歴:喫煙なし、飲酒なし
▶ 家族歴:特記事項なし
▶ アレルギー歴:薬剤なし、食品なし
▶ 外傷歴:なし
▶ 鍼治療歴:なし
▶ 虫刺され歴:なし
▶ 動物接触歴:なし
▶ 水曝露歴:なし
▶ 歯科治療歴:なし
▶ 海外渡航歴:なし
▶ 身長163cm、体重53.4kg
▶ バイタルサイン:体温36.8℃、血圧112/48mmHg、脈拍80回/分(整)、呼吸数18回/分、SpO2 98%(room air)
▶ 意識レベル:JCS Ⅰ-1
▶ 眼:眼瞼結膜蒼白なし、眼球結膜黄染なし、点状出血なし
▶ 頸部:項部硬直なし、頸部リンパ節触知せず、頸部血管雑音なし
▶ 肺・呼吸器:心音整、心雑音なし、呼吸音清、副雑音なし
▶ 腹部:平坦・軟、腸蠕動正常、腹部に圧痛なし、筋性防御なし
▶ 背部:肋骨脊椎角叩打痛なし
▶ 四肢:右膝関節に発赤、腫脹、熱感、圧痛あり、関節可動域制限あり
▶ 皮膚:Janeway斑なし、Osler結節なし
高齢男性の急性発症の単関節炎です。
鑑別診断を挙げてみて下さい。
▶ 細菌性関節炎
・非淋菌性:高齢、免疫不全状態の患者に多い
・淋菌性:若年性に多い。移動したり、2〜3個の関節を侵す場合も多い
▶ 結晶誘発性関節炎
・痛風:閉経前の女性にはほとんどみられない
・偽痛風:高齢、膝・手首・肩などの大関節に多い
▶ 外傷性
・外傷、過多の運動
▶ 急性多関節炎の初期
細菌性・結晶誘発性関節炎の鑑別のためには関節穿刺が必要!
検査に何を提出しますか?
“Rule of 3Cs”
「cell count(細胞数)」「culture(培養)」「crystals(結晶)」の3つはセットで覚えましょう
どれぐらいの細胞数で鑑別しますか?
“Rule of 2s”
200、2000、2万で大まかに覚える
10万を超えると化膿性関節炎の可能性が高まる2)
本患者では黄色、低粘稠度、細胞数8万2000/mm3、多核球85%であった。
穿刺液培養を提出する上で大切なことは?
細菌検査室に電話する!特殊な培地の準備を依頼
▶ 淋菌性を疑う場合は通常の血液寒天培地ではなくて、チョコレート寒天培地での培養でしか生えてこない!
▶ 一般的には低温保存が必要だが、淋菌だと常温保存!
連鎖球菌様のグラム陽性球菌が散見された。
血液・関節液培養の結果、β-streptococcus sp.(G群)が検出された。
血液培養はどれぐらいの割合で生えるでしょうか?
血液培養陽性率は50%、グラム染色は50~60%、関節液培養は70~90%3)4)。
G群溶連菌による右膝化膿性関節炎
整形外科による関節洗浄を実施。アンピシリン2g 1日6回による点滴加療を合計4週間継続し、アモキシシリン内服に切り替えて退院とした。
滑液包炎(bursitis)と化膿性関節炎とを、どのように区別するか?
「関節可動域制限の有無と、自発時・他動時のどちらで疼痛が増強するかを観察」することで滑液包炎と化膿性関節炎を区別する5)。
クリスタルが見えたら偽痛風でしょうか?
偽痛風とは限らない
Pitfall:クリスタルが見えたからといって安心してはいけない。化膿性関節炎との合併もありうる!6)
ある報告によると、化膿性関節炎のうち5%は結晶誘発性の関節炎を合併するとされている。グラム染色陰性、CRPが10mg/dL未満、細胞数が10000/μL未満で化膿性関節炎の合併は少ないという。化膿性関節炎の場合、関節液の細胞数やグラム染色での評価はもちろん、血液培養が検出される場合も多いため血液培養採取は必須である。
▶ 関節液を提出する際には3C(cell count、culture、crystal)が重要
▶ 細胞数が10万/mm3以上だと細菌性の可能性が高い
▶ 関節穿刺液の培養検査をオーダーする際にはチョコレート寒天培地もset upする
【文献】
1) 西崎祐史:月刊レジデント. 2018;1(9):116-23.
2) Margaretten ME, et al:JAMA. 2007;297(13):1478-88.
3) Hoffman SL, et al:J Infect Dis. 1984;149(2):157-61.
4) Edelman R, et al:Rev Infect Dis. 1986;8(3):329-49.
5) Gary S. Firestein, et al:Kelly's Textbook of Rheumatology. 8th ed. Saunders, 2009.
6) Papanicolas LE, et al:J Rheumatol. 2012;39(1):157-60.