1 測定原理
パルスオキシメーターでは,可視光線の赤色光(波長660nm付近)と近赤外線の赤外光(波長940nm付近) の発光ダイオードが用いられ,吸光度が計測される。「透過/前方散乱型」と「反射/後方散乱型」があり,前者が医療機器としてよく使用される。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定時のチェックポイントを以下に示す。
2 ピットフォール
測定環境・身体状況・製品ごとの問題などが,パルスオキシメーターの測定に影響を与える。健常者であっても,測定して10秒以内の値を見ていたり,太陽光の下であったり,手足が冷たかったり,測定中に指を動かしてしまったり,歩行中や運動中であったりすれば,容易に低値を拾いうる。高度1万mを飛行する航空機内や標高4000mの登山時など,高地(低気圧)では低酸素血症に陥りSpO2低下をきたしうる。
なお,SpO2が正常でも,低酸素血症や呼吸不全が存在しうる疾患もある。たとえば,心疾患による心拍出量の低下や,肺疾患,腎疾患,膠原病や内分泌代謝疾患などによる臓器の血流量低下,貧血,異常Hb(COHbやMetHbなど)の存在下では,酸素供給量が不十分となるため,SpO2が正常でも低酸素血症や呼吸不全を生じうる。また,初期であればどの疾患でも,SpO2の低下が現れない可能性も高い。初期の低酸素状態は,呼吸数の増加などによる換気量の増加によって,代償されることがある。成人の正常呼吸数は14~20回/分であり,それを超えて頻呼吸となっているときには,SpO2が正常であっても呼吸不全を鑑別に挙げる。
通常は,低酸素血症により頸動脈小体などの化学受容体が刺激されると,その刺激が中枢神経系にフィードバックされる。そして,呼吸中枢刺激による呼吸努力の増大を通し,呼吸困難が生じる。つまり,SpO2の値が呼吸困難に直接結びつくというわけではない。
3 臨床評価
低酸素血症に伴う臨床症状としては頻脈,動悸,高血圧,興奮,頻呼吸,失見当識,不穏,低血圧,乏尿,倦怠感,傾眠,感情鈍麻,反応時間遅延,判断力・注意力・作業能力低下,協調運動不能などがある。進行すれば意識消失,徐脈,チェーン・ストークス呼吸,ショック状態,死亡につながりうる。
特に既往のない健常者であれば,平時のSpO2の数値が96%以上であることを確認し,普段と異なる症状があり平時のSpO2よりも3~4%下がる場合は受診が望ましい,などの助言を行う。
低酸素血症の診断や治療適応の判定には,SpO2単独で判断するのではなく,呼吸数や意識状態など全身状態を把握するとともに,必要時には動脈血ガス分析,胸部X線/CT検査,心臓超音波検査などを実施することが望ましい。特に,動脈血ガス分析は,呼吸不全の診断・鑑別にあたり,重要な検査である。