【動脈血採血でも正しいK濃度測定が可能】
偽性高カリウム血症が生じる主な原因は2つあります。1つは採血手技上の問題で,採血に非常に時間がかかり,あるいは不慣れなため,採取した血液が機械的な溶血を生じている場合です。この場合は,手技に習熟した人が採血することで問題は解決します。もう1つは,血小板増多を伴う場合です。一般に血小板数が50万/μLを超えると,採血後の血小板からのK遊離により,血清と血漿のK濃度に差を生じるようになり,100万/μLを超えると非常に顕著な差になることが知られています。この場合にはヘパリン採血を行うことで,凝固を防ぎ,血小板からのK放出が防止されて,正しいK濃度を測定することができます。
通常の動脈血採血に用いられる採血キットのシリンジ内には既にヘパリンがコーティングされるなどの処理がされていますので,偽性高カリウム血症を疑った場合,動脈血採血でも正しいK濃度測定が可能です。動脈血採血は外来で施行するには手間がかかりますので,こうしたキットを用いて静脈血採血を行っても電解質濃度に関しては同様の結果が得られます。検査オーダーとして,静脈血ガス分析というオーダーであっても,ガス分析の装置が用いられます。通常のガス分析装置であれば,電解質濃度は血清化学分析装置と同様のイオン電極により測定されますので,静脈血ガス分析を行うことで偽性高カリウム血症の診断を行うことができます。
なお,ガス分析ではNa,Caといったイオンも測定できますが,採血キットを用いず,ヘパリンカルシウムなどを用いると,当然のことながらCa濃度は高値となりますので注意が必要です。市販の採血キットではこういったことがないよう,たとえばヘパリンリチウムが用いられていますので,電解質濃度も正しく知りたい場合は採血キットを用いることを勧めます。
【回答者】
林 松彦 河北総合病院臨床教育・研修部部長