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血清カリウム高値から偽性高カリウム血症をどう鑑別するか?

No.4967 (2019年07月06日発行) P.54

林 松彦 (河北総合病院臨床教育・研修部部長)

登録日: 2019-07-04

最終更新日: 2019-07-02

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採血検査の結果,時折,電解質のカリウム値が予想外に高いことがあります。溶血など検体の問題なのか,生体での高カリウム血症を心配すべきなのか,判別するにはどうすればよいでしょうか。ナトリウム値とクロール値との差は手がかりになりますか。

(愛知県 S)


【回答】

【ヘパリン採血を行い血漿でカリウム値を測定することで鑑別が可能】

ご質問にある通り,日常診療において,時折,予想外に高値の血清カリウム値の報告を手にすることがあります。原疾患は様々と推察しますが,慢性腎臓病あるいは薬剤などの相応の理由がない患者で高カリウム血症をみた場合,偽性高カリウム血症を鑑別する必要があります。偽性高カリウム血症の原因は,採血手技等の不手際による人為的な場合と,血液成分の異常でみられる場合に大別されます。

採血に不慣れな場合に強い陰圧をかけて採血を行うと,採血中に溶血を起こし,細胞内からカリウムが逸脱して,血清カリウム値が上昇します。また,駆血帯を強く巻き,末梢の細い静脈から時間をかけて採血した場合も,同様の現象が起こります。こういった場合には,検査結果のコメント欄に「溶血あり」などと表示されていることが多いので,見逃さないように注意が必要です。

血液の成分の変化により偽性高カリウム血症を生じる場合もあります。血小板血症が代表的で,血小板数が100万/μL以上になると,採血後,試験管内で血液が凝固する際に血小板からカリウムが放出され,異常高値となります。軽度のカリウム値の上昇は,50~60万/μL程度でもみられることがあります。急性・慢性骨髄性白血病などで10万/μL以上の場合に同様の現象を生じることも報告されています。また,遺伝性の赤血球膜異常症,口唇赤血球症では採血後に検体を長時間放置すると,赤血球細胞膜のイオン透過性が高いためにカリウムが漏出することが知られています。このように明らかな赤血球膜の疾患を伴わない場合でも,同様の現象で高カリウム血症を生じていると考えられる症例もあります。

前述の人為的要因の場合も,この血球成分の異常の場合も,ヘパリン採血を行い血漿で測定することにより鑑別が可能です。なお,慢性リンパ球性白血病で10万/μL以上の場合,同様の現象が起こることが知られていますが,この場合は単にヘパリン採血を行うだけでは不十分で,白血病細胞を破壊しないように,採血した容器をできるだけ静かに輸送し処理することで正しい値が得られたという報告があります。

血清ナトリウム値とクロール値の差による,測定された血清カリウム値の妥当性の判断は,高クロール性代謝性アシドーシスによる高カリウム血症を想定した場合,ある程度は可能と思われます。すなわち,血清ナトリウム値とクロール値の差は,重炭酸濃度とアニオンギャップの和ということになり,アニオンギャップが正常値,およそ12mEq/Lと考えれば,この差が小さいということが重炭酸濃度が低値であることを想起させます。しかし,検査結果の血清カリウム値が妥当かどうかの確固とした基準はないので,実際の使用には危険が伴うと思われます。

【回答者】

林 松彦 河北総合病院臨床教育・研修部部長

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