編著: | 青島正大(石心会 川崎幸クリニック 院長補佐 兼 呼吸器内科部長・前 亀田総合病院 呼吸器内科 主任部長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 122頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2021年03月05日 |
ISBN: | 978-4-7849-6286-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆外来でよく診る「あるある」症状に対して、その症状が出るメカニズムまで考えた病歴聴取、それを踏まえて鑑別診断するための身体所見のとりかた、検査を解説しております。さらに著者が経験した「あるある症例」だけでなく、「あるある……と思いきや実はやばやば!?なピットフォール症例」も掲載。当初の見立てが的中しなかったときの「プランB」の引き出しが確実に増えます。
◆「こういう病気のこういう症状は、こういうメカニズムで起こる」と医師が理解していれば、診断に近づくことができます。呼吸器専門医を志す若手医師だけでなく、総合診療医・一般の実地医家の皆様にも、診療を組み立てるうえで役立つ1冊です。
かつて自分が医学部の学生であった頃,次のような言い伝えがありました。「名医は患者が診察室のドアを開けて入って来て,椅子に座ったときにはもう何の病気か診断をつけている」と。患者さんが診察室に入ってからのわずかの間で得られる情報は,顔貌・体型・皮膚の状態・歩様など視診に属するもの,息遣い(聴診をせずに聞こえる呼吸音),呼気の臭気くらいに限られますが,これらのわずかな情報で診断してしまうというのです。この中には最も重要な問診が欠落しているし,当時と比べ疾患の数が増え,病態の理解がはるかに進歩している現在ではこのような神業はもはや通用しないと言えます。おそらくは五感を総動員して診断することの重要性を強調した都市伝説でしょう。しかし当時と問診,身体診察の重要性は少しも変わりありません。最初に得られる臨床情報からスタートして,どのような検査モダリティ・検査項目を次に選択するのか「攻めの戦略」が求められます。
本書は患者さんの訴えから,どのように診療を組み立てていくのかを誌上で再現する形式になっています。疾患別に項目立てて解説した類書は多いのですが,その形式では実際の診療を追体験はできません。呼吸器内科を受診する患者さんの訴えは,ほぼ本書の項目でカバーしており,呼吸器内科に限らず,一般内科を受診する患者さんの訴えとかぶる部分も多く,呼吸器専門医を志す若手医師だけでなく,総合診療や一般の実地医家の皆様にも診療を組み立てる上で役に立つ内容になったと自負しています。
診断が正しく,治療がすんなりと上手くいけば,我々医療者にとっても患者さんにとってもハッピーであることは間違いありませんが,実際の診療では当初の見立てが的中せず,治療効果が得られない場合に少なからず遭遇します。むしろ,このような場合にどのように次の対応を組み立てることができるか,すなわちどのくら
い「プランBの引き出し」を持っているかが臨床力とも言えます。本書はこういったプランBの対応を「想定範囲を超えたヤバヤバ症例」として取り入れた点が特徴です。これを参考にして,読者の皆様にも「プランBの引き出し」を持って頂けると思います。本書に示した「プランBの引き出し」はそれぞれの項目で1つですが,実際の診療ではもっと多くの引き出しを持つことが求められます。
この序文を書いている現在,世の中はコロナ禍第3波の真只中で,外来受診を控える患者さんも少なくありません。このような状況も反映して,厚生労働省ではオンライン診療を推進しようとする動きが加速しています。オンラインでの初診に不適当な臨床状況の洗い出しが関連領域の各学会で行われ, 呼吸器領域では,①急性・亜急性に生じた息苦しさ,または呼吸困難,②安静時の呼吸困難,③喀血(大量の血痰),④急性の激しい咳,⑤喘鳴,⑥急性・亜急性に生じた嗄声,⑦強い,あるいは悪化する胸痛/胸部圧迫感,がオンラインでの初診に不適すなわち対面診療が必要と位置づけられています。本書に取り上げた項目の多くはこれらに合致しており,しっかりと身体診察を行い,攻めの検査戦略を組み立て,診断・治療につなげることが求められることを再確認した思いです。
本書は私が亀田総合病院に勤務した最終の年に一緒に働いた伊藤博之先生と共同で執筆しました。また日本医事新報社編集部の村上由佳さんには企画段階から一貫してお世話になりました。脱稿が予定より大幅に遅れましたが,辛抱強く待ってくれた彼女の支援があって本書が日の目を見たことは間違いありません。2人にはこの場を借りて心から感謝したいと思います。
最後に本書が読者の皆様の日常診療の手助けになることを願ってやみません。
2021年2月
青島正大