編: | 山田耕三(神奈川県立がんセンター呼吸器内科部長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 188頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2017年12月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6653-0 |
付録: | - |
いまやわが国の死因トップに躍り出た肺癌。肺癌の早期診断のためには、まずはファーストステップの胸部X線写真の読影のコツを身につけ、必要とあればCT画像、PET画像などの診断機器による質的診断を行う施設への橋渡しができるように最新情報をインプットしておくことが必要です。プライマリケアの現場で自ら的確な診断をするための手引きとなるよう、また実践に役立つ知恵を身に付けるための教材としてご活用下さい!
1章 肺癌の読影における胸部X線写真およびCTの役割
01 肺結節病変におけるX線写真の役割
02 CT画像で肺癌はどうみえるのか
03 肺癌検診について
2章 肺癌を見落とさないための胸部X線写真読影の基本と解剖
04 X線写真の読影の基本と読影に際して押さえておくべき解剖(正常構造)
05 X線写真とCT画像の相関
3章 肺癌を読影するための非癌病変の画像診断
06 一見肺癌にみえる非癌病変
07 非癌病変に特有なサイン,典型的な画像
4章 肺癌のCT診断─良性,悪性の鑑別
08 CT画像診断の悪性サイン,良性サイン
09 CT画像の読影手順
10 CT画像でみる肺癌典型例
5章 すりガラス陰影を呈する病変の鑑別診断
11 pure GGNとmixed GGN
12 GGN病変の鑑別と経過観察
13 特殊なGGN症例
6章 肺病変と気管支の解析─気道の視点から病変を読む
14 気管・気管支の構造と画像への投影
15 気管・気管支に着目した病変の読影
16 気道・肺・縦隔に関連する画像サインと慣用語
7章 充実型病変を呈する病変の鑑別疾患
17 充実型病変の典型例
18 充実型肺癌と充実型の非癌病変の鑑別
19 PETはどこまで役に立つのか
8章 肺癌を見落とさないための肺野病変の質的診断
20 肺癌のサインは? 組織型別の特徴的なサインは?
21 thin-section CT(TS-CT)を用いた内部構造の解析と比較読影の重要性
22 造影剤を使用したCTは鑑別に役立つのか
9章 今話題の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の肺障害
23 癌薬物療法で起こる薬剤性肺障害
24 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による肺障害
25 免疫チェックポイント阻害薬の肺障害
10章 肺癌を見落とさないためのまとめ
─各所見の重要な項目・鑑別の方法・経過観察の重要性など
26 肺結節の辺縁性状,内部性状の評価
27 周囲の既存構造と病巣の関係をどう把握するのか
28 経過観察の重要性
11章 病理所見と画像所見の相関
29 2015年版WHO肺癌組織分類の要点─ 2004年版との比較
30 肺癌組織分類をもとにした病理所見と画像所見の相関
索 引
巻頭言
近年,肺癌は日本の死因トップに躍り出ていますが,この背景として超高齢社会, 禁煙対策の遅れが挙げられます。2015年の肺癌による死亡数は74,478人,つまり1日約200人の方が死亡している現状をふまえ,臨床呼吸器の領域では「治る肺癌を早く見つけて速やかに治療する」ことが大変重要となっています。もちろん,第一線の地域医療を担う先生方においても,肺癌の早期発見・早期診断は日常の重要な課題と言えます。
欧米では肺癌は専門病院に集まる傾向がありますが, わが国では地域の先生方が自施設で肺癌検診=「個別検診」を行い, ある程度まで質的診断を行って専門医へ紹介しています。肺癌診療は専門病院と家庭医(かかりつけ医)が二人主治医の体制で行う方向性が厚生労働省から示され,今後ますます地域の先生方の臨床における重要性が高まると予想されます。
私は現在地域のがんセンターに勤務し, 地域の先生方とも密接に連携を図り,肺癌診療を行う体制を構築しています。しかし地域によっては,肺癌はどの医療機関でどの診療科の医師に相談すればよいのかがわかりにくいことから,その方針が宙に浮いたままとなり,その結果,肺癌の早期診断も不十分となり, 進行肺癌になっても治療が開始されないといった状況があることも散見されます。
本書では,肺癌の診断,特にデジタル画像での胸部X線写真の解剖,読影の基本,胸部X線写真とCT画像の相関を中心に解説しました。これは20年前から我々が毎年開催している「寺子屋式の肺癌画像診断の勉強会:肺がん画像診断セミナー」の内容そのものであり,その講師陣に最新の情報を記述して頂きました。
胸部X線写真の読影から,最新のCT診断,病理診断,免疫チェックポイント阻害薬による肺臓炎の診断まで幅広く,最新の理論をふまえながら,実践に役立つ知恵を身に付ける教材として, 本書が幅広く読者の診療現場で役立つことを願っています。
神奈川県立がんセンター呼吸器内科部長 山田耕三