著者: | 藤田次郎(琉球大学医学部附属病院病院長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 154頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2018年06月30日 |
ISBN: | 978-4-7849-4772-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
第1章肺炎の臨床診断(血液マーカーも含めて)
第2章肺の解剖から理解する肺炎のパターン
第3章すりガラス影とcrazy-paving pattern
第4章病変の部位から見た呼吸器感染症
第5章お気に入りの細胞から見た呼吸器感染症
第6章肺の容積変化とair bronchogramの有無から見た肺炎の診断
第7章細菌性肺炎と非定型肺炎
第8章高齢者の誤嚥性肺炎
第9章肺炎と心不全との接点
第10章急性間質性肺炎と急性呼吸窮迫症候群との接点
第11章肺炎と特発性間質性肺炎との接点
第12章肺炎と慢性閉塞性肺疾患との接点
第13章肺炎と呼吸器ウイルス感染症との接点
第14章肺抗酸菌感染症の画像診断
第15章肺膿瘍
第16章肺真菌症の画像診断
第17章肺炎と肺腫瘍との接点
第18章肺炎と無気肺との鑑別
第19章高齢者肺炎の治療指針
今回,日本医事新報社から「診療所で診る市中肺炎」という本を上梓させていただいた。
私は岡山大学医学部を卒業後, 虎の門病院で内科レジデントとして2年間研修した。1981年当時はめずらしかった内科ローテーションを経験し,呼吸器内科で研修している際には,当時「虎の門病」とも言われたびまん性汎細気管支炎を初め,多くの呼吸器感染症を経験した。
その後,国立がんセンター内科レジデントとなった。主として肺がんの診断と治療に関する研鑽を積んでいた際に縁があり,米国ネブラスカ医科大学に留学する機会を得た。米国留学中の2年間は,気管支肺胞洗浄液の解析,および細胞培養などの基礎的研究に従事した。
日本に帰国後,故郷で新設された香川大学医学部附属病院で勤務することになった。香川大学医学部附属病院では,呼吸器内科医として17年間にわたり臨床・研究・教育に携わった。ナンバー内科であった第一内科には,血液内科,膠原病内科,内分泌内科,糖尿病内科などもあり,これらの基礎疾患を有する患者に合併する呼吸器感染症の症例を多数経験した。
また教授として赴任した琉球大学医学部附属病院第一内科での13年間でも,結核,非結核性抗酸菌症などを含め,多くの呼吸器感染症を診療してきた。
以上紹介した私の経歴からわかるように,幅広い領域における呼吸器感染症を経験したことが自身の診療の土台になっている。また本書で取り上げた感染症と他疾患との接点は,私自身の臨床経験から導かれたものである。さらに本書で紹介した症例は,香川大学医学部時代,および琉球大学医学部附属病院での自験例が主体である。
さて近年,高齢化率の上昇に伴って肺炎の死亡率は増加しつつあり,平成23年には日本人の死因の第3位となった。このような背景から,一般医家にとって,肺炎は日常的に診療する機会の多い疾患になっている。本書を企画した当初,市中肺炎のみについて記載するつもりであったものの,日本医事新報社からの要望もあり章の数が徐々に増えていった。最終的に, 呼吸器の解剖, 肺炎の臨床診断,画像所見,高齢者の肺炎の特徴,間質性肺疾患との関連,肺がんとの関連などを,また病原体別の視点で非定型肺炎,ウイルス性肺炎,肺抗酸菌感染症,肺真菌症などを,章として取り上げた。
日本医事新報社の皆様の多大なご尽力もあり,私の視点から見た市中肺炎の診療のコツをまとめることができたと自負している。この本が一般医家の先生方の肺炎診療の一助となることを心から願っている。
2018 年6 月 琉球大学医学部附属病院長:藤田次郎