著: | 土田敬明(国立がん研究センター中央病院内視鏡科(呼吸器)医長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 90頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2020年02月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5750-7 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
近年,中心型肺癌が激減し,気管支鏡は末梢肺病変からの検体採取とEBUS-TBNAがその主な役割になっています。そのため,可視範囲の病変の所見をとる機会が少なくなっています。末梢肺病変の生検の際に,可視範囲に異常所見があるにもかかわらず気が付かずに通過してしまいそうになる場面にしばしば遭遇します。可視病変の所見をとることは気管支鏡の基本技術です。
また,気管支鏡の操作中に方向感覚を失う場面もよく見かけます。特に3分岐する気管支で方向が分からなくなるケースが多いようです。また,気管支の命名についても混乱している場面も見かけます。気管支鏡操作中の方向感覚は末梢肺病変からの検体採取の際にも重要です。ターゲットに向かう分岐は今見えている枝のどの方向にあるのかがわからないと,無駄な探索を続けることになり非効率的です。方向を正しく判断することによってスムーズな検査ができますし,より上手に見えるようになります。被検者の方の負担も少なくなります。
本書では,まずChapter1で,方向感覚を失いやすい部位を中心に方向の定め方を解説しました。また,気管支,特に亜区域支の命名についても解説を加えています。気管支鏡検査はチームで行う場面が多く,チーム内の意思統一のためにも気管支の命名で混乱しないようにしましょう。
Chapter2,3の可視病変の所見の取り方では,病変の深さにより所見が異なりますので,病変の深さによる所見の取り方を実例とイラストによって解説しました。気管支の解剖学的構造を理解することで病変の存在部位を推定します。病変の存在深度を知ることにより生検デバイスの選択を適切に行うことができます。比較的深い部位に病変が存在する場合,擦過細胞診はまず無効であろうことが推定できます。深度によっては鉗子生検でも検体を正しく採取できないと判定できれば、針穿刺生検(TBNA)を選択するなど,より正確な診断に寄与することができます。また,各病変の進展形式によってもその所見は異なります。進展形式による所見の違いも鑑別の一役には立つでしょう。蛍光内視鏡については,表層に近い病変では正常部位とのコントラストがわかりやすくなるため,病変の進展範囲を確認する目的でよく使用されます。蛍光内視鏡は,上皮下層に存在する線維組織からの緑色の蛍光をとらえます。したがって,この蛍光の見え方により病変の存在深度をより明確に知ることができます。本書では,蛍光内視鏡の所見の取り方についても解説します。実例には希少疾患も含まれていますので,目にする機会が極めて少ない疾患の所見を確認することができます。
Chapter4はクイズ形式になっておりますので,ご自身で所見をとる練習にご利用ください。病名当てというよりも,所見をとることに重点を置いてください。解答編には所見の説明がありますので,所見の確認にご利用ください。類似する病変の比較では,所見が類似する2種の病変を並列して比較しています。類似する病変を並べて比較することにより,それぞれの所見の違いがより分かりやすくなります。