著: | 倉原 優(独立行政法人国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 386頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年02月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5701-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第1章 総論─喘息診療の前に押さえておきたいこと
1 喘息ってなあに─古代ギリシャからの歴史
2 喘息の定義─ COPDとの違いは?
3 知っておきたい「気道リモデリング」
4 喘息の疫学─喘息死は年間約1,600人
5 喘息のリスク因子─衛生仮説って何ですか
6 GINAとJGL,どちらのガイドラインを使用する?
第2章 喘息を診断する
1 喘息の診断基準,言えますか?
2 何を検査したらいいの?
3 ピークフローの位置づけ
4 重症度分類─目の前にいる患者さんは安定期? それとも発作中?
第3章 いろいろな喘息
1 ACO(asthma and COPD overlap)─喘息とCOPDのオーバーラップ
2 咳喘息,アトピー咳嗽,非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)─難解な好酸球性下気道疾患たち
3 肥満喘息─減量なくして改善なし
4 運動誘発喘息(EIA),運動誘発気管支収縮(EIB),アスリート喘息
5 妊娠喘息─赤ちゃんを産むために
6 職業性喘息─仕事を辞めなければならない?
7 アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息,AERD)
8 高齢者喘息
第4章 喘息を治療する前に
1 治療ステップを知っておこう
2 吸入薬のステップアップ・ステップダウン─奥が深いアップダウン
3 吸入薬を使う前に押さえておきたいあれこれ─大事なのはアドヒアランス
第5章 喘息治療の実際(1)─吸入デバイス選択論
1 吸入デバイスの選び方
2 吸入薬の粒子径は重要?
3 吸入補助器具(スペーサー)は有効?
4 pMDIとDPIとソフトミスト
5 イラストでわかりやすい! 各吸入デバイスの使い方
6 吸入デバイス別おそうじ方法/廃棄法
第6章 喘息治療の実際(2)─吸入薬
1 吸入ステロイド薬(ICS)ってどんな薬?─喘息治療の主役
2 吸入ステロイド薬(ICS)各製剤の特徴
3 吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬(ICS/LABA)─喘息治療の主役の座を狙う若手俳優
4 吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)─ベテラン助演俳優
5 吸入短時間作用性β2刺激薬(SABA),吸入短時間作用性抗コリン薬(SAMA)─喘息治療のエキストラ,ここぞというときに役に立つ?
6 吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA):トリプル吸入療法─喘息治療の舞台に顔を出すようになったベテラン俳優
7 クロモグリク酸─控え役者
第7章 喘息治療の実際(3)─非吸入薬
1 ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)─内服薬の一軍選手
2 テオフィリン─内服薬の二軍選手
3 経口ステロイド─ここぞというときの奥の手
4 生物学的製剤─高額だが良薬
5 気管支サーモプラスティ─気管支鏡でカンタン治療?
6 アレルゲン免疫療法─水面下の伝家の宝刀
第8章 喘息治療の実際(4)─増悪時治療
1 喘息増悪時治療の具体的手順─私はこうする
2 JGLガイドラインにおける発作治療ステップ
3 喘息増悪に対する全身性ステロイドのエビデンス
4 喘息増悪時に使う全身性ステロイド以外の薬
第9章 喘息管理の実際
1 外来受診時のACT質問票記入と吸入手技確認
2 外来受診時に行う各種検査とステップチェンジ
第10章 実際に喘息を診療してみよう
18歳,男性のケース─花粉症の季節に喘息が悪化したため来院
29歳,女性のケース─妊娠25週で喘息増悪を起こして救急搬送
33歳,男性のケース─多忙なビジネスマン,シンプルな処方を希望
45歳,女性のケース─難治性喘息,ICS/LABAが無効
50歳,女性のケース─難治性ACO,トリプル吸入療法が無効
60歳,男性のケース─服薬アドヒアランスがきわめて不良
85歳,女性のケース─施設入所中に喘鳴で搬送
呼吸器内科医を10年以上やっていると,「専門は何ですか?」と聞かれることが増えました。呼吸器内科全般を診療しているので,決してサブスペシャリティを持っているつもりはないのですが,1つ挙げろと言われれば「喘息」と答えるかもしれません。
私にとって,喘息は思い入れのある呼吸器疾患であり,自身のライフワークでもあります。私が医師になって初めて診た患者さんは重度の喘息だったのですが,あのとき,まさか自分が呼吸器内科医になり,ずっと喘息を診ていくことになろうとは予想していませんでした。
この本の初版が出てから,いろいろなエビデンスが登場しました。生物学的製剤も,ゾレア®1剤だったのが,あっという間に4剤にまで増えました。トリプル吸入療法が実臨床で適用されるのも,もうすぐです。しかし,喘息診療には変わらないことが1つだけあります。それは,最大の予後規定因子が「吸入アドヒアランス」であることです。
吸入薬がうまく使えているかどうかを判断するため,外来で患者さんといろいろな話をする必要があります。朝起きてから夜寝るまで,どういう生活をしているのか,趣味やペットはどうか,アレルギーはどうか。私は喘息患者さんと外来で雑談をしながら,コントロールが良好になるよう舵取りするのが好きです。
この本を手に取って下さる方の多くは,普段から喘息患者さんを診療している医師だと思います。吸入薬の使い方やコツなどを,患者さんと笑いながら語れるようになると,喘息診療はもっと楽しくなります。是非この本で,診療の幅を広げて下さい。
第2版の刊行にあたり,出版に尽力下さった日本医事新報社の村上由佳さんに心より感謝申し上げます。今回も,私の外来に通院している患者さんにたくさん質問し,ご協力頂きました。ありがとうございます。いつも執筆の時間を作ってくれる,妻の実佳子,長男の直人,次男の恵太も,ありがとう。
倉原 優