編: | 菊地利明(新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器・感染症内科学分野 教授) |
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編: | 渡辺 彰(東北文化学園大学 医療福祉学部 抗感染症薬開発研究部門 特任教授) |
判型: | B5判 |
頁数: | 212頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年10月31日 |
ISBN: | 978-4-7849-4937-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
Ⅰ 総論:基礎編
1:疫学
2:病態
トピック 次世代の診療につながる最新知見
Ⅱ 各論:CQ編
1:疫学
1.なぜ日本,東アジアで多いのか?
2.本当にヒトーヒト感染しないのか?
3.地域差はあるか?
2:検査・診断
1.慢性気管支炎をどうみて,鑑別するか?
2.質量分析法はどのように使うのか?
3.検査結果をどう解釈するか?
4.血清診断は可能か?
コラム 検査のための痰がとれない
3:治療
1.治療開始の判断は?
2.治療継続の期間は?
3.治療目標はどこに置くか?
4.予後の見きわめは?
5.化学療法剤の使い分けは?
6.リファブチンはいつ使う?
7.副作用の頻度と対応は?
8.対症療法はどうする?
9.ストレスや栄養の重要性─NTM症の悪化の機序を考察しつつ
10.合併症例:緑膿菌
11.合併症例:アスペルギルス
12.合併症例:免疫不全
13.薬の止めどき・替えどきは?
14.推奨レジメンが使えない場合はどうするか?
15.結節・気管支拡張型のフォローと予後はどうするか?
16.再燃時の対応は?
17.いつどのような場合に外科に紹介するか?
このたび『非結核性抗酸菌症マネジメント─咳と痰をどう診るか?リアルワールドでのコツと工夫』が刊行の運びとなりました。「咳と痰」は、診療所やクリニックを受診される方にとても多い愁訴です。そこで本書は、慢性的な「咳や痰」を訴える患者さんを診療する際に必ず鑑別しなければならない非結核性抗酸菌症を取り上げました。
非結核性抗酸菌症は環境常在菌の吸入曝露によって発症しますので、すべての人が感染しうるcommon diseaseと言えます。慢性的な「咳や痰」を訴える患者さんを診療されている臨床医にぜひ知っておいて頂きたいことをまとめ、本書を編集致しました。
一言で言うと、非結核性抗酸菌症はわかりにくい疾患です。実際の診療の現場では様々な疑問が生じています。
まず、非結核性抗酸菌は環境常在菌です。菌が痰から検出されても「この菌が原因の感染症として、そのまま診断していいのか?」という疑問が生じます。最近は質量分析法で、耳慣れない非結核性抗酸菌が同定されることもありますので、ますます混乱してしまいます。
続いて、非結核性抗酸菌症という診断にたどり着いても、菌種によっては長期間安定している患者さんや自然寛解する患者さんもいます。「この患者さんに薬物治療は本当に必要なのか?」という疑問が生じてきます。薬物治療の効果も決してすべての方に認められるわけではありませんし、治療後の再発も多いですので、臓器機能が衰えているような高齢者では、ますます薬物治療の適応に悩んでしまいます。
さらに、薬物治療が必要と判断しても、一般の内科診療ではあまり使い慣れない用法用量のマクロライド系薬や抗結核薬を、多剤併用で1年以上も使わなければなりません。軽い消化器症状から失明まで様々な副作用対策を押さえておく必要があります。「どういう点に注意しながら、実際治療しなければならないの?」という疑問が当然生じてきます。
本書では、非結核性抗酸菌症の総論に加え、実際の症例を交えながら、このような本症の診療で生じてくる様々な疑問に答える解説を各論としました。実臨床を意識した内容となっておりますので、慢性的な「咳や痰」を訴える患者さんの診療現場で、ぜひお役立て頂けることを願っております。
2020年10月
菊地利明
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。