序 文
このたび、本邦で初めての医師および研究者向けの本格的な線維筋痛症に関するテキスト『線維筋痛症ハンドブック』が出版の運びとなりました。
線維筋痛症は最近注目を集めている疾患のひとつでありその病因・病態の解明はまったく不明でしたが、本邦で3年前、筆者が班長を務めております厚生労働省の研究班が結成され、疫学・病態の研究で大きな成果が得られました。その全貌が徐々に明らかにされてくるにつれ、特に本症の痛みの特性が、分子レベルでの解明が急速に進んでいます。しかしながら一方では、臨床の現場で患者さんが種々の疼痛を訴えて来院しているにもかかわらず、疾患に対する認識の低さに加えて、病像の複雑さがこの診断や症状の把握さらには治療に著しい困難を招いております。
また診療体制についても、行政からの対応が急がれています。特に本症の複雑な臨床像はリウマチ科や整形外科、精神科、心療内科、ペインクリニックなど多岐にわたります。それに過敏性大腸炎や膀胱炎、ドライアイや口腔内乾燥症が加わると、さらに多くの病院やクリニックを転々とする数多くの患者さんがみえます。こうして種々の医療機関を転々としている多くの患者群を適切に把握する上で、本書はそれぞれの分野から解決していただく大きな役割を果たすものであると確信致します。
本書は色々な分野の先生方にご執筆して頂きましたが、専門とする領域によって本症のとらえ方にも異なる点が少なからずあります。したがって、必ずしも一貫したマニュアル的なテキストとは異なる部分もあり、用語の不統一もありますが、筆者の御意向を尊重しました。今後、ガイドラインなどの作成が進むにつれて統一したものへとなっていくと思います。ご多忙中のところを執筆頂きました先生方、本書出版にご尽力を頂きました日本医事新報社に改めて御礼申し上げます。
2007年5月吉日
編者 西岡久寿樹
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