今国会に提出されている受動喫煙対策の強化を盛り込んだ健康増進法改正案。日本の喫煙環境はどうなっていくのか。加熱式たばこの有害性はどう見れば良いのか。たばこの害に詳しい大和浩氏(産業医大)に話を聞いた。
理想はもちろん、例外のない屋内全面禁煙です。しかし、政治家や日本たばこ産業(JT)、飲食業界の反対が強い今の状況では、できるところから一歩ずつ進めるしかありません。そういう意味では、今回の案は最大限工夫されたものではないでしょうか。
争点となっていた飲食店での喫煙について同案では、未成年者の喫煙場所への立ち入りを禁止しています。よって、店側は学生のアルバイトを確保するためには禁煙化せざるをえません。
新規店舗やチェーン店も規制対象です。居酒屋チェーン「串カツ田中」では既に、家族連れの顧客確保などの理由から、全面禁煙に踏み切っています。時世の流れを踏まえれば、今さら喫煙専用室を物理的に作るよりは全面禁煙の方向に傾くでしょう。
同案は、2020年の東京オリンピックまでに完全施行するとしています。現段階では55%の飲食店が小規模店舗として例外扱いとなっていますが、残り2年の間に3割のお店が入れ替わると考えれば、喫煙可能な飲食店は4割弱にまで減るでしょう。しかも、これは現時点の予測なので、今後禁煙化の流れが加速すれば、喫煙できる飲食店は少数派になると思います。
そうですね。法律は最低限の規制です。自治体の裁量で規制を強化することが可能です。奈良県庁では、喫煙した職員のエレベーター利用を禁止するルールを4月に導入しました。東京都でも条例の制定は間近です。他の自治体、特に、オリンピックの会場が設置される自治体も動き出すことでしょう。
禁煙化へのハードルを下げるために、オリンピックの前後1週間を含めて、屋内全面禁煙期間を設けるというのはどうでしょうか。これであれば、協力してくれるお店は多いのではないかと考えています。いざやってみて、家族連れもたくさん来客し、たばこ臭くない、と評判も良ければ、期間を終えても禁煙を維持するお店は増えるだろうと期待しています。オリンピックに限らず、お祭りなどのイベントの際に各地域で実施してほしいです。