潰瘍性大腸炎(UC)では内科的治療薬の選択肢が増加しているが,それに従い,手術適応も変化している
難治例が減少し,がん/dysplasiaで手術となる症例が増加している
UC症例の緊急手術の予後は不良であるため,手術のタイミングが重要である
クローン病(CD)では最近,積極的にバイオ製剤を投与しているが,初回手術時の手術適応には大きな変化はない
CDも適切な時期に外科的治療を行ったほうが,QOLは維持される
CD領域でも発がん症例が増加しており,特に肛門病変が長期間持続している症例では注意が必要である
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)の手術の目的は大きく2つにわけられる。1つはQOLの向上であり,もう1つは救命である。QOL向上のための手術としては,あらゆる内科的治療に抵抗した難治例や,壊疽性膿皮症などの腸管外合併症の改善のために手術となる症例がこれに含まれる。一方,救命のための手術としては,強力な内科的治療に反応しなかった重症・劇症例や発がん症例が挙げられる。
表1に2016年12月までに当科で手術を行ったUC症例1817例の手術適応を示した。絶対的手術適応と相対的手術適応の割合は37%:63%である。相対的手術適応では難治例が最も多い手術適応となっている。
UC領域では2000年以降,内科的治療法の進歩が著しい。表2は内科的治療法の進歩に伴い,手術症例を3群にわけて示したものである。前期はステロイドと5-ASA製剤が治療の中心であった1999年以前の手術症例,後期は2009年以降の手術症例で,わが国ではタクロリムスとバイオ製剤が保険適用を取得している。2000~08年の症例を中期としており,この時期には血球成分除去療法が保険適用となっている。手術適応の大きな変化としては,前期と中期では大きな変化がなく,70%程度であった難治例が,後期では52.4%まで減少していること,これに伴い,がん/dysplasiaで手術となる症例が,3.0%から22.7%まで急激に増加していることが挙げられる。
UCにおいてはサーベイランスの概念が確立されたことにより,がん/dysplasia症例でも進行がんが減少し,早期がんが増加しているため,予後は改善傾向である。low grade dysplasia症例は厚生労働省班会議の治療指針では相対的手術適応となっているが,病理的な診断が,診断医により大きく左右されることを考慮すると,high grade dysplasiaと区別することなく手術適応としてもよいのかもしれない1)。