潰瘍性大腸炎に対する標準術式は,大腸全摘,回腸囊肛門吻合術あるいは回腸囊肛門管吻合術である
いずれの術式も開腹手術,腹腔鏡手術ともに可能であるが,術後経過も含めて判断し,施設ごとに安全かつ確実に施行できる術式を選択する
小開腹でも適切な開腹鈎,牽引鈎の使用で大腸全摘術が可能である
症例によっては,人工肛門を造設しない一期的手術も可能である
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班の治療指針にあるように,潰瘍性大腸炎に対する主な手術術式は図1の通りである1)。
通常,大腸全摘術が行われ,現在の標準術式は自然肛門を温存する大腸全摘,回腸囊肛門吻合術あるいは回腸囊肛門管吻合術である。前者は直腸粘膜を抜去し,回腸囊と肛門を手縫いで吻合し,後者は歯状線の口側2cmほどのいわゆる外科的肛門管を温存し,この部位と回腸囊を吻合する。これらの術式は一期的に行われる場合と,二期あるいは三期分割で行われる場合があり,分割手術では人工肛門を造設する(図2)。
その他,自然肛門を温存しない大腸全摘,永久回腸人工肛門造設術を,高齢者,肛門機能低下例,直腸癌の合併例などに対して行う場合がある。結腸全摘,回腸直腸吻合術は直腸に癌,high grade dysplasiaがなく,直腸壁のコンプライアンスが良好な症例で,自然肛門の温存を希望する高齢者などに対して行う場合もあるものの,残存直腸の癌を生じる可能性があり,施行する場合には術後の十分なサーベイランスが前提となる。
潰瘍性大腸炎に対する上記のいずれの術式も開腹手術,あるいは腹腔鏡手術での施行が可能である。施設ごとに一期的手術か分割手術かを含めて術式の選択が異なるが,重要な点は術後に良好なQOLが得られるように,各施設で安全かつ確実に施行できる術式を選択することである。
本稿では,開腹手術の適応と実際について述べる。