睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対し持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行うにあたり,アドヒアランスは重要であるが,年齢については見解の一致を見ず,血圧との関連については研究されていない。2006年7月から11年6月までに当院でSASと診断され,CPAPを受けた34名を対象にCPAP使用期間を比較した。3~4年使用すると習慣化して脱落しにくいこと,ESS値が高く眠気が強い者はCPAPによる眠気の改善が使用の動機づけになること,高齢者はCPAPに対する理解力や適応能力が乏しいため脱落しやすいことが考えられた。高血圧合併SAS患者の一部では,CPAP機器装着の不快感により交感神経活動がいっそう亢進し,CPAP使用を困難にしている機序が考えられた。この仮説を実証するためには,さらなる症例を蓄積し,CPAP使用時の交感神経活動の変動について検討する必要がある。
持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)は,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)に対する有効かつ安全な治療法である。しかし,実際にはこれを拒否もしくは中止する患者が少なからず存在する。
Englemanら1)の報告によれば,CPAPを推奨された患者のうち5~50%が受療を拒否し,受け入れた患者でも12~25%が3年以内に治療を中止した。また過去の研究において,CPAPのアドヒアランスの良好さと相関する要素として,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)の高値2) ~ 7) ,エプワース眠気スケール(Epworth sleepiness scale:ESS)の高値2) 8) ~ 10) ,いびきの主訴の有無,BMI(body mass index)の高値2) 11) ~ 13) が指摘されている。
しかし,年齢に関して言えば一定の見解はなく5)14),初診時の血圧とCPAPのアドヒアランスとの相関に言及した研究は今まで存在しない。また,CPAP導入から脱落までの使用期間に着目してCPAPのアドヒアランスを検討した報告は少ない。さらに,東京都足立区東部に位置する164床の市中病院である当院ではSASの診療は一般内科で行っているが,当院のような中小規模の医療施設におけるSAS診療の現状に関する報告は少ない。
本研究の目的は,CPAPを使用したSAS患者の初診時臨床所見がCPAP使用期間に影響を与えるか否かを検討することにより,CPAPのアドヒアランスに影響を与える因子を見出すことである。
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