肺胞蛋白症は,肺サーファクタントに由来する物質が肺の末梢の気腔に異常に貯留し,呼吸不全に至る疾患群である。1958年に記載されて以来,その原因は長らく不明であったが,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびその受容体の遺伝子欠損マウスが予想外にも肺胞蛋白症を生じることが報告され,GM-CSFが肺サーファクタントの恒常性維持に中心的な役割を担うことが明らかになった。
一方,ヒトでは当時は原因不明であった特発性肺胞蛋白症患者の気管支肺胞の洗浄液からGM-CSFの生物活性を阻害する抗GM-CSF抗体が99年に発見され1),現在では「自己免疫性肺胞蛋白症」と分類され,血清抗GM-CSF抗体測定が診断に有用である。さらに2008年,抗GM-CSF抗体陰性の肺胞蛋白症患者においてGM-CSF受容体α鎖およびβ鎖の遺伝子に変異を持つ患者が報告され,これらは「遺伝性肺胞蛋白症」と呼ばれる。また,上記以外で血液疾患などのほかの疾患に関連する肺胞蛋白症は「二次性肺胞蛋白症」と分類される。
治療は1960年代から始められた全肺洗浄が現在も行われるが,自己免疫性肺胞蛋白症に対してはGM-CSF吸入療法の有効性が報告され臨床試験が進行中であり,将来の治療として期待される2)。遺伝性肺胞蛋白症ではマクロファージを用いた細胞治療や遺伝子治療が考案・研究されている3)。
【文献】
1) Kitamura T, et al:J Exp Med. 1999;190(6):875-80.
2) [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02702180]
3) Suzuki T, et al:Nature. 2014;514(7523):450-4.
【解説】
鈴木拓児*1,萩原弘一*2 *1自治医科大学呼吸器内科准教授 *2同教授