各種質問票が加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の臨床症状の評価に用いられる
テストステロン補充療法後にAging Male's Symptoms(AMS)スコアは改善することが知られている。しかし,患者の訴えとは必ずしも一致せず,AMSスコアの変化からテストステロン補充療法の有効性を判断することは困難であると考えられる
近年,わが国における加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism:LOH症候群)に対する関心は高まりつつあり,メディアにおいても多方面から取り上げられている。世界的に見ても長寿国家のひとつであり,超高齢社会を迎えるわが国において中高年男性のQOLを維持することは急務と言える。わが国における正確な有病率は明らかにされていないが,諸外国での報告では,45歳以上の男性の約40%において血清総テストステロン(total testosterone:TT)値が低下しているとされている1)2)。疾患概念が浸透するにつれ,LOH症候群を疑い医療機関を受診する男性は増加するものと推測される。
わが国では2007年に「LOH症候群 加齢男性性腺機能低下症候群 診療の手引き」が発刊され3)4),日々の診療に用いられている。LOH症候群とは,加齢に伴うテストステロン値の低下とそれに伴う臨床症状であり,テストステロン値を計測することが診断の第一歩である(図1)。諸外国では血清TT値の計測が一般的である5)6)。しかし,日本人男性の血清TT値は加齢に伴う変化が乏しく7),加齢とともに低下する血清遊離型テストステロン(free testosterone:FT)値の計測が有用とされている8)。
LOH症候群は,①抑うつ,いらだち,不安,疲労感などの「精神・心理症状」,②発汗,ほてり,睡眠障害,記憶・集中力低下,肉体的消耗感,筋肉量と筋力低下による除脂肪体重の減少,骨塩量の低下などの「身体症状」,③性欲低下,勃起障害,射精感消失などの「性機能関連症状」,の3つに大別される。最近では,LOH症候群ではメタボリックシンドロームのリスクが高まると報告され,注目されている9)~11)。LOH症状は多岐にわたる一方,それらを総合的に評価するには症状に特化した各種質問票が広く用いられている。本稿ではLOH症候群で用いられる質問票および使用方法を,これまでの報告や当科における経験も交えながら紹介する。