2018年6月7日から4日間,バルセロナ(スペイン)で開催された欧州高血圧学会(ESH)学術集会において,新たな欧州高血圧ガイドラインの概要が発表された。正常血圧上限値を「130/85mmHg未満」に引き下げた米国新ガイドラインとは異なり,血圧分類に変更はない。その一方,多数存在する血圧コントロール不良例をいかに減らすかという観点から,薬剤治療アルゴリズムの簡略化を含め,数多くの具体的方策が推奨されている。
なお,ガイドライン全文の公表は,欧州心臓病学会(ESC)学術集会開催中の2018年8月25日(欧州時間)の予定だという。
血圧の分類は2013年ガイドラインから変更はなく,診療所血圧「140/90mmHg以上」が「高血圧」とされた。また「高血圧」は従来と同様に3グレードに分類される。24時間自由行動下血圧(ABP),家庭血圧(HBP)による高血圧基準値にも変更はない。新ガイドライン公表翌日のディベートセッションにおいて,「米国,欧州いずれの高血圧定義を支持するか」との問いに,(欧州高血圧学会ということもあり)9割以上が欧州定義に手を挙げていた。
高血圧の診断にあたっては,「診療所外血圧(ABPまたはHBP)」がより重視されるようになった。すなわち,診療所血圧で「140/90mmHg以上」が確認された場合,「高血圧」との診断にあたり,従来は「診療所血圧の再評価」の繰り返しのみが推奨されていたのに対し,新ガイドラインではそれに加え,「診療所外血圧評価」のみによっても「高血圧」と診断できるとされた。さらに,「診療所血圧の再評価」よりも「診療所外血圧評価」のほうが適している患者類型も記されている。