慢性咳嗽の古典的3大疾患である咳喘息,後鼻漏,逆流性食道炎の3つを念頭に病歴聴取や身体診察を行う
胸部X線写真以外の検査はルーチンで行うべき根拠に乏しい
疑われる疾患に対する特異的治療を試みることが診断の助けとなる
一般的に3週間以上続く咳嗽を遷延性咳嗽,8週間以上続く咳嗽を慢性咳嗽と呼ぶ。慢性咳嗽の頻度は報告によって異なるが,最近の報告では非喫煙者の3%,喫煙者の8%で認められるとされる1)。喫煙者の咳嗽では,喫煙による咳嗽なのか,それとも肺癌などそれ以外の原因かを見きわめる必要があることからもまずは禁煙指導を行うべきである。
急性咳嗽では,まず急性上気道炎や市中肺炎などの気道感染症を考える(図1)2)。遷延性咳嗽においても48%が感染後咳嗽との報告もあり3),以下の項目を満たすような場合は経過観察が妥当であると思われる4)。
・ 先行する感冒様症状がある
・ 自然軽快傾向である
・ 周囲に同様の症状の人がいる
・ 経過中に膿性度の変化する痰がみられる
しかしながら,遷延性咳嗽でも改善傾向にないような場合には,慢性咳嗽と同じようなアプローチをとる必要がある。鑑別には病歴や身体所見が重要なことは言うまでもなく,特に喫煙やアンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬による咳嗽は病歴で除外しなければならない。検査の中では胸部単純X線写真が簡便な方法としてよく用いられている。単純X線写真により心不全,肺癌,肺結核,間質性肺炎,サルコイドーシスなど多くの疾患がスクリーニングできるが,単純X線写真では鑑別できない疾患(咳喘息や逆流性食道炎)が診断に苦慮することになる。